タイトル:紅巾乱戦勃発 14

その頃、この啓示は広州の全域に広がり、他にも多くの人が集まるようになっていた。それにより、多くの人材が、集まっていたのである。
その数、5000人になっていたのである。其の5000人の中には、社会から取り残された人もいたのである。例えば、広州から少し内陸部の地域では、女性と男性の間の第3の性と呼ばれる人々も含まれていた。その中で、そのリーダー的な人材が1人いたからである。
その人物の名前は、篠原御影と言う人物である。そしてもう一人、澤野彩と言う人物もいて、2人とも女性であった。しかし、第3の性はそれだけで片付けられるのではない。
実際も言われている話だが、染色体の符号がXXだと女性、XYだと男性と言うのは、遺伝子学で解明されているものであるが、特殊例もあり、XO、XXX、XXY、XYY、XXYYなどと、数えだすときりがない上、特殊性がある為か、原因が解明されていないものも中にはある。
それ以外にも、「ふたなり」と呼ばれる言葉が、明治以前には使われており、かの有名な美男子歌人在原業平とかけて「ふたなりひら」と言う言葉も存在している。その2人が、どう言う意味か兵士として、応募してきたのである。その2人について、一美は早速別の部屋に通す事にした。
「実は、ひとつお聞きしたいのですが、どこかの施設に入っていたと聞きました。それについては…?」
一美は、そう聞きたかった。しかし、途中で言葉を切ったのである。その先が言えなかったからだ。
「私たちは、一つの体の中に、二つの性を宿している両性具有者です。だから私と一緒に彼女も、同じ施設に入ったのです。」
一美は、おそらく、その場でどんな言葉を、かけなければならないのかが読めなくなっていた。本当の事を話し始めると、おそらく2人を傷つける事になると感じ、口をつぐんだ。
一美は、そのまま黙ってしまった。2人も黙りこむ。
「…」
あまりの衝撃の大きさに、言葉を失いつつも、2人を覗き込んだ。2人もその事に薄々気付きながらも、黙っていた。
「どうなされたのですか?」
と声がする。
「あらあら…、可愛いお二方。どうなされたのですか?」
と少女が、声をかけて来た。北田麗だった。
「また、面接ですか?」
と聞くが、3人とも返事をしない。そこで、一美の肩を叩き、一美を外に誘った。
「あの2人をなぜ、面接したのです?」
一美は、一言話した。
「実は、広州の近くに、社会不適格の施設に入っていたと書かれていたの。本人が書いたのか、それとも代人が書いたのか分からない上、どうして、社会不適格なのかも聞かねばならないと思った故だが、まさか…。」
その先を麗は、
「社会不適格者とは、半陰陽と言う意味があると、彼女はそう申したのですね。」
と答えた。一美は頷く。その顔は、沈んでいたのだ。なぜこう言う人物に、面接したのか…、後悔していた。
「それでも、よろしいのではないのですか?」
麗は、励ましともとれる言葉をかけた。なぜ、そう言う事を言うのか、一美は分からなかったのである。
「どうして?」
短くだが、聞いてみた。それに麗が答えるには、
「社会不適格者を受け入れる事によって、何にでも寛容な形で、人々を受け入れるとイメージを植え付けるでしょう。そして、それが多くの人々の印象を良い方向に代える事が出来るはずです!」
そして、次のように続ける。
「それは、私たちの新しい時代を受け入れてくれるのに、いいイメージを持っていかねばならないと、そう考えるべきであり、これは我々のこれからの糧となると存じます!」
思わず感心して、一美は涙を流した。
「私は、良い妹に恵まれた。感謝してもしきれない。」
麗は、一美の涙に心を撃たれ、一美の顔に手を触れた。涙の流れた一美の顔に、麗の温かさが伝わった。
「麗は優しいなぁ。ありがとう。その心は忘れないよ!」
そう言い、再び一美は、部屋に戻った。2人は一美の戻った顔に、驚きを隠せなかったのである。
「一美さま!」
一美は、
「御影殿、彩殿、先ほどは申し訳ございませぬ。」
と応対していた。今までにない変わりようであった。
「一美様、私たちの事は…?」
と彩が、質問をすると。
「ある人が申すには、『多くの人々を受け入れるのが君主だと!』。それを申した者は、私の心の友だと言える。私は、その人の助言を得て戻った。だから、この一美に全てを任せてもらいたい。」
一美は、涙の跡をぬぐって、笑顔を作った。一美が乗り越えようとしている事、それは、多くの人々が志を持ち、そして同じ国家建設を夢見て成し遂げると言う組織にしなければならない。「中華帝国」の建設、それが、人々の志だろうと、考えていた。
おそらく、広州の人々が、少なくともそう思っていたのは事実であった。彼らの総意は、「中華帝国建設」で動いていた。それは、福州にも伝わってきた。
福州でも、軍兵は5000名を数えた。名簿に記す名前も多くなってきた。福州も同じ事が行われている。それで、新兵の調練には、勇策と梢から名前を改めた倉坂孫嬪(孫臏では「まごあしき」と読みづらい為、この名前になったのである)と共に、戦術の実践に動き出した。それに基づき、和久高志はその隊長として、経験を積んでいたのである。「孫子」や、「呉子」などの兵学書も地道に読み続けていた。
それ以外に、勉強会を始めており、これからの時代を考える上で、どのようにしていくのかを、話し合っていた。中には、武司、日花里も参加していた。そこで新たに、新庄美咲が加わっていた。
「これから、話し合うのは、福州や広州、それに、広西チワンでも同じ事が起きている。それに、このようにおおくの兵士たちを招集する理由は、最近、中元で頻発している『紅巾』を名乗る軍団の存在だ。これを如何にして、考えるべきか…。」
勇策が話を切り出して、勉強会が始まった。
「とりあえず、『紅巾』は斉王朝の冠の色でもありますし、その冠や、帽子をかぶっている事から推察するなら、中華族が、再び天下を取ると言う事に他ならないと考えるべきでしょう。」
確かに、それはそうだ。今、人々は怒っていると言う事を彼らは分からないのかと、
「確かに、今はその状況にはある。しかし、事は、それだけにとどまらない。最近では、多くの民族が、自立を求めて反乱を起こすというケースは後を絶たないと聞く、それゆえ、反乱軍の多くが、体制に反対していると言う事らしい。だが、それが、はたして良い方向に向かうのかと言えば、それは異なると私は考えている。それぞれの、思考に基づいた軍が、集まると対立が起こり、次第には空中分解なんて事も起きかねない。それはそれで不幸だろうと思う。」
勇策は、その様に述べていた。確かに、今の状態は、異常と言えるだろう。それをどのように処理していくのか、それが、一美たちに突きつけられている問題そのものであった。

この記事へのコメント