タイトル:紅巾乱戦勃発 24

一美たちはすぐに、軍の武装を解除して、兵役ではなく商団の構成員として、各地に派遣するという手続きを取った。それに、中華各地を回り、実情を見て回ると言った事をやろうとしていた。特に、夏休みや、冬休みと言った休暇の時期に、アルバイトを兼ねて、旅に出ると言った事をやっていた。今度は、それを休日だけでなく、平日にまで拡大し、多くの情報を集めようとしていた。
つまり、南方遠征に対しての策を講じるべきか、考えていたのである。如何にして、戦争を回避するべきか、一美は、その情報を集める為に、北京コロニーに鹿島新次郎を派遣し、そのほかには、益州、上海、南京、山東、漢中、蘭州の6か所に、商人を派遣して情報収集にあたらせた。
一美自身も、休暇届けを出して、西側のチベットからの情報を集める為に、船を出立させたのである。それに即して、留守役を穂積と軍師の一人紀子に頼み、チベットに向けて出立したのである。
南方遠征が気になる中で、大勢力の商団の商人が、危険を冒してまでチベットに向かうのは、危険だと家臣には思えた。しかし、航路は、益州経由ではなく、広西から雲南を越えて茶馬古道航路(本当は、雲南チベット連絡回路)に進むと言う経由を取ったので、その心配はなかった。また、雲南に立ち寄るのは、ある人物に会う為でもあった。その人物とは、左遷された大和宗弘で、そのほかにも、チベットコロニー王国では、「法蔵王」と人々から呼ばれているダライ・ラマ16世にも合う事を希望していた。故に、それが受理されて、今の時期に来てもらいたいとの要請に答えたのである。
故に、一美はクリフ、優香、凛、茜、昭代と共に、チベットに向かう事になった。
チベットは、昔から仏教などの盛んな地域であり、ラマ教として世界に知られている。特に、高田ヤマトが信じていたのが、チベット仏教だった事も、之に影響を及ぼしているかもしれない。しかし、そのチベットの民は、コロニーを形成する為に、新たな地域を割り当てて、地球との貿易を密にすると言う事で、国家としての独立を認めた。と言う話がある。
それにおいて、一美たちにとっては、立場が近い国との交渉ではなく、交易の旅となったのである。

そして、その間に、伊須磨射宗兼が、野上宗朝と連絡を取って、合わせる事にしたのである。だから、一美と宗弘が会えるかもしれない、と言う事である。
それゆえ、立ち寄ってみてはと、宗兼から誘いがかかった。それで、雲南州に立ち寄る事にしたのである。広州港を発って、翌週には、広西チワン自治コロニー州の南寧コロニーに、そこから、約2週間をかけて、雲南州にたどりつき、4週間後にはチベットの首都ラサコロニーにという日程が組まれ、商品は広州で生産された海産物の冷物(チベット系コロニーでは生産が出来なかった為に)と工業製品数種を輸出すると言う事になったのである。そして、チベットからは乳製品等を輸入すると言う手続きも、無事に申告したのである。
「船の出発は、7月20日として旅程の支度にかかるように、お願いします。」
一美の命を受けた商団員たちは、すぐに支度にとりかかっていた。カレンダーを見ると、足掛け3か月が過ぎたのである。
季節は初夏を通り越して、夏の7月に入ったのである。それに、夏の暑さが、身にしみる頃になっていた。と言う所で、この話を聞いたのである。
「そうか、先方より連絡はありました?」
一美は、宗兼にそう聞いてみた。宗兼は、
「前向きに検討すると、申し上げておりました。ただ…。」
と言葉を区切り、
「『大波』の主要幹部の一人の彼が、どうして、南州(雲南州の略称)に左遷されたのか、そこが、どうも解せません。」
と言った。
「どうしてです?」
どうしてそうなるのか、宗兼は次のように説明を始めた。まず、雲南州に左遷とは言え、事実上太守級の能力を持っている宗弘が、南方遠征の対象となる広州の商人と会う事は、リスクを冒す事に他ならず、しいて言えば、敵にあっていると言う事にもなり、自分立場が非常に危うくなると考えているはずだ。
「確かに、そう言えますね…。」
一美は、考え込んだ。ラフェリアも、
「宗兼さんの言う事は、事実に即していると考えるべきでしょう。」
と宗兼の話に理解を示した。一美は、思わず、考え込んだ。
「そう言う事ですか、分かりました。慎重になりましょう。しかし、くれぐれも、先鋒の失礼にならないように、お願いします。」
と2人に忠告し、旅支度に入った。
「それで、法蔵王が、今頃になって私たちに、来ていただきたいと申したそうですが、それはどう言う事でしょうか?」
と聞いてきた。それに関しては、ラフェリアが、
「おそらくですが、法蔵王も同じ考え方をしているのでしょう。中華族が主役ではない今の政権に、どうするべきかを模索しているのではないでしょうか?」
と分析した。
だからと言っても、チベットと雲南州を結べば、南に反大波ラインと言えばよいか、反対勢力が集結していると言った状況を造ってしまう。
それゆえ、事は慎重に行わなければならなかった。そこで、先遣隊を先にチベットに派遣しておく事を考えた。適任の人物に宗兼を派遣することを即断したのである。
「それで言えば、チベット交渉の先遣隊に宗兼さんを充てたいのですが、よろしいですか?」
一美は、宗兼に聞いてみた。
「私なら、大丈夫です。法蔵王と会ってみます。」
宗兼は、決意のような事ともとれるはきはきとした言い方で、一美を安心させた。
「では、よろしくお願いします。体に気をつけて、行ってきてくだされ。」
と宗兼を送り出した。さて、これで一美たちの、活動が始まった。これが、後々多くの場所で活用される事になる。それに関して、一美は、多くの仲間の輪を広げるのに、重要な役割を、宗兼が果たす事になるとは考えていなかった。
そして、彼が立ち去った後、一美はラフェリアに、話を切り出した。
「この話は私から言うけれど、彼は私たちと共に、私たちにはなくてはならない人になるかもしれない。」
どうしてなのか、ラフェリアは、
「おそらく、彼がいなければ、より多くの情報が私たちには届かない、と言う事になるのでしょうか?」
一美は、少し異なると前置きをしながらも、
「その情報を、別の角度から見る事が出来る人物だと、私は会ってみて思ったのだよ。だから、私たちの頼もしい見方になるのかもしれないと、思ったのだよ。」
それに対して、ラフェリアは、
「私も、そう思っております。それに、彼はよりおおくの人を仲間にできる組織の立ち上げに、力を発揮できる人物だと、私は考えております。それゆえ、多くの情報を集める情報組織を立ち上げてみたほうがよろしいかと。」
ラフェリアの言葉に、一美は、頷いた。
「私も、そのように考えておりました。おそらく、情報に強いのでしょう。」
一美の一言に、ラフェリアは、笑顔を作って見せた。

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