タイトル:紅巾乱戦勃発 26

そんな事が起きている広州と時を同じくして、福州でも、同じ危機感を抱いていた。早速、高田達が集まって、連日の会議で話し合っていたのである。
「それにしても、対応が早いと思いませぬか?」
確かに、啓宗は不安の色を隠せない。
「確かにそうなるが、今の状況をどうしようかと考えねば。」
勇策もそう言うしかない。そこに孫嬪が車いすに座ったまま、
「確かに、この状況は、我々にとって、予期していた事です。いまさら慌てる必要はございません。」
そう言ったのである。啓宗は驚いて、
「それでは、どっしりと構えておけと言う事ですか?」
と上ずった声を出すが、それに孫嬪は黙って頷く。孫嬪も、この事でうろたえるわけにはいかないと、覚悟を決めていたのである。
それだから、勇策も自分の情けなさに、頭を軽くたたいて考え込んだ。
そして、今まで考え込んだが、この事態から新たな可能性が見えるのではと、勇策は考えていった。
「それで、どうするかは私で何とかしなければならない。その為に、我々が、いまやるべき事は、情報の収集と、軍の動向。それから、吾軍の籠城時の兵糧の備蓄量を調べてくれないか。」
孫嬪たちは、調べ上げた倉庫帳簿をもとに、籠城したら何日になるかを計算していた。計算式から約100日持つことが分かってきた。3か月から少し、かかる程度かそれ以上の備蓄量だった。次に、それ以外の備蓄量も調べてみた。エネルギー使用量、船舶関係の他、さまざまな要素を盛り込んで、総合的に計算してみると、100日から120日ぐらいは持つと言ったのである。120日と言う事は4カ月、其の4カ月の間に建てられる対策は、おそらく船舶に因る広州への輸送、そして多くの他の地域との貿易、輸送艦船などなどを会計関係が目の回る忙しさになっていた。
それから、福州の地の利を生かして、船をできるだけ集めておこうと考えていたのである。それで、改めて、どう言った形でシミュレーションを行っていたのである。そして、報告を出したのが、その次の日の事だった。カレンダーを見ると7月12日の事だった。この7月中に福州は、紅巾軍の攻撃を受けるのではないかと考え、防衛に集中するべきではないか、そう言った意見も出てきたのである。

では、一美たちには、どう見えていたのだろうか、それは、おそらく、それが事実なのだろう。一美たちは、この問題に福州が早く対応している事が、一美たちを以上に引き締めたのである。
それにおいて、一美たちは、すぐに、広州を発ち、広西チワン州を経て、雲南州に向かったのである。3日間かかる行程だが、この3日間が短いように、一美には思えた。その中で、福州では、籠城作戦に関するプランを立てている中で、このような状態の中で、一美たちも同じプランを立て始めたのである。
しかし、それが、
「今は、たくさんの人々が、この街に避難するかもしれませんし、籠城したとしても100日も持つかどうかは…。」
会計の担当になった兼人は、さまざまな要素を考慮して、それらについて、正しくと言うべきか、正確な計算をして、籠城の限界期日を算出すると、80日間と短くなってきてしまったのである。
長くても86日間の籠城しかできない。これは、あくまでシミュレーションである為、実際はそれよりも短くになると考えられる。だから、次の事態に備えるために、何をするべきか、を考えなければならなくなったのである。
「これでは、80日間の籠城が、限界点と言えるかもしれません。それは、籠城して時を稼いだとしても、越南等が、援軍として駆け付けるように時間を稼ぐとしても、それ以上の籠城は難しくなると言う事です。」
確かに、この籠城は危険な賭けでもある。だから、
「と言う事は、籠城するのはいいけど、できるだけ短期間で行う事が上策だと、それが君の考えか。」
武彦は、難しい顔をして黙りこんだ。これは大変な事を、聞いたのではないかと考えてしまったのである。
「ですが、籠城してみて、援助があるなら、未来は見えて来ます。故に、長期間の場合がNGと言う事です。」
と噛み砕いて答える兼人。
それに対して、武彦は、その考えを止める事にした。それは、相手が同じ中華族の集団であり、その中華族の民に対して刃を向ける事になるのは、ためらいたくなる。しかし、この地域が屈してしまえば、自分たちの考え方が流されやすく、圧力に屈したと誤解を受けやすい。故に、圧力に屈したと言う事を出してしまえば、イメージが悪くなるばかりか、『大波』本国政府を正当化してしまうと言う事になる。それは避けておきたかった。それは、一美たちが、訴えてきている事すらも、握りつぶしてしまうと言う事にもつながってしまう。武彦は、そう考えていた。

福州でも、一美たちの話を聞き、これではこの事態を克服する事は難しいと考えていた。兵糧の備蓄量が、低かったのが理由に挙げられる。
やはり、兵糧攻めにされてしまえば、音を上げるのは目に見えていた。そこで、広西州を経由して越南に、書簡を送る事を考えていた。
それと同時に、福州港を監督する福州政府と交渉を行い。一美たちとの連絡が取れるように、変えたのである。それは、今後の一美たちにとっては、今後の道が開けた事に、他ならなかった。
そして、福州と同じく、広州にも連絡を受ける体制が整い、その中で、情報網の充実が図られたのである。この情報網は充実したのである。だが、一美たちはこの状況を苦々しく思っている『大波』政府が、この情報網を潰しにかかる事を読んでいた。
それも、実際ある手を講じてそれをやり遂げようとしていると考えていた。それに対する対策にも万全を期して臨むだろうとも、予測していた。その予測とは、偽の情報を流して、相手を混乱させる事であるが、それが出来るのは、今の『大波』本国政府には、そう言った人材はいるのだが、はたしてそう言った事をするのか、そう言った疑問が残っていた。
それで、福州では孫嬪たちが、こんな事を口にしていた。
「おそらくですが、『大波』本国政府の本当の狙いは、我々ではなく、一美様にあると思います。それゆえ、私が広州に出向くことも考えているのですが、どうでしょうか?」
孫嬪の発言に、福州の高田商団、小寺商団の部下たちは、驚いた顔をした。おそらく、これに気付いたのは、一美を除くと孫嬪だけだといるのかもしれない。
「それは、確かにそうだが、『大波』が、彼女を消したい理由には何があるのかね。一美様の命か?」
それはどうだろうか。
「そうでしょうか?」
おそらく異なる答えが返ってくると思います。と孫嬪は言おうとした。啓宗が、
「どう言う事です?」
と聞く。それを考えると、孫嬪は、
「一美様だけではなく、一美様に連なる集団を、闇に葬りたいと考えているからではないでしょうか。」
それに関して、確かにそうだと思えるのかもしれない。
それが、一美たちの感じている危機感だろうか、孫嬪は考えていた。しかし、それだけではない事にも気付いていた。
(つまり、一美様は、我々とは異なる考え方を持っていて、それが、思わぬ方向に行かないだろうか?)
と危惧していたのである。

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