タイトル:紅巾乱戦勃発 27

さて、平原の斉地域では、その文書を破棄した知らせを聞き、激怒するしかなかった。その理由は、中華族に因る大国を突く上で一致していた。しかし、その思想も同じはずだが、彼らのやろうとしている武力革命が、この後の混乱を起こす事になると一美たちは、考えたからである。それに、思想の異なる集団に因り、おそらく、思想が異なるのなら、その思想の集団が群雄割拠を起こすに決まっているのである。だからと考えていくと、一美の選択は正しかったのである。
しかし、どうしてなのか、彼らは、この事態の複雑さを示していた。それは、多くの民族がイスラムからの独立するために、多くの地域で反乱が起きていたのである。
故に、それぞれの地域に定住する民族の自立が相次いでいたのであるが、その民族にはそれぞれの、理念信念があり、その理念に従って、彼らは動くと言うのであるから、彼らには、それなりの信念と言うのはあったのだろう。と言う事は、それが、多くの国々の人々が、自分たちの為になる国を造ろうとしている事に他ならなかった。
その流れがあったからこそ、多くの人々が、立ち上がったのだからと、彼らは考えていたのである。しかし、それに一美たちは疑問を感じていた。
それは、はたして彼らの意識には統一という意識がないのだろうか、それが、一美の考えている事だった。
だからと言って、それが正しいのではなく、間違っているわけでもない。それゆえ、彼らの考え方にも一理あるだから、彼らの意見を尊重しておかねばならない。一美は、その危険性を、意識していたのである。しかし、紅巾軍は、それを否定的に取られていたのである。故に、彼らの考えていた事は、広州を取り込む事に因って、シンボルを獲得して、それに因り、中華を統一するというシナリオに他ならない。
しかし、それは一美にとっては良くないものだ。彼女をただ単なる飾りにするわけにはいかない。その理由は、彼女が指導する立場に立って、戦わなければ、中華族にとって、未来は描けないととそう思っていたのである。それが、一美には間違い移った。
それだから、彼らの考え方は早急過ぎて、あせっているように見えてしまう。ひどい事を言うのなら、彼らは、もっとも、中華族に見えて、古に学ぼうとしない。と言う事一美は思っていたのである。
だが、一美の姿勢は、他の人々にとっては、珍しいのかもしれなかったのである。それは、人々の意思を統一して、それをもとに、人々をよりよい方向に導く、それが、一美たちの今できる事で、今、やらねばならないことだった。
しかし、一美は、チベットに向かったままである。それで、留守居を任されている穂積は、諸将たちに、次のように説いた。
「今、我々は、『紅巾』軍からの書状を、破り捨て破棄してしまう行動に出たのですが、それが、自らの首を絞めていたことになり、憂いている方も多いと思います。しかし、これが我々のほか、民を救う事に繋がると私は信じております。それゆえ、不測の事態が起きた場合、防備を強化してください。それが、私から言いたいことです。次に、交戦状態に陥った場合、速やかに軍を召集し、避難民からも志願兵を募って、多くの兵隊を徴収すること。これは、事が起きてからでは遅いので、できるだけ早く行ってください。」
それを聞き、一斉に彼らは飛び出して行った。それは、これから始まる、広州の命運をかけた防衛戦争、そして、『大波』政府との長い戦いに挑むことになるのだが、このときは、一美は、こうなるとは思っていなかった。

そのころ、『大波』本国政府は、多くの反乱軍に対処していて、それ以上の事態には見舞われたくないというのが本当のところだった。
そこに、『紅巾』軍が広州を攻めるという情報は、願ってもないものだった。理由は、広州を攻撃すると、いう情報が本当なら、両軍を一網打尽にできると考えていたのである。
言えば、一挙両得と言えばよいのかそれが彼らの目的だった。そうだとするなら、一美たちにはどういったことが起きるのか、最悪のパターンは、一美たちの軍隊を一気に攻めて、戦死させるというものが想定できる。しかし、一美の龍の価値は、永遠に失われるということになる。しかし、それをしようと一美は考えるほど愚かではない。となれば、秘策を用意しているはずだ。
それゆえ、一美が広州から引き出されることで、何とかなりそうだが、それも一美は想定しているだろう。いつも以上に難しい相手をすることになる『大波』政府軍は、どういった作戦を立てるのか、答えは州政府の中にありそうで、監視官僚が、イスラム主義者ということに注目した。それによって、武官を補強し、監視体制の強化に乗り出したのである。そういうことである。
しかし、その担当者を決めようという時点で問題が起きた。それは、この問題を担当する監視官僚をやっていた人材が、反乱などによって不足していたという事だった。それによって、人員不足に陥った事が、この後の『大波』本国政府で取りざたされる「採用人員の門地・宗教差別問題」に発展するのである。皮肉な結果をもたらすのだが、一美たちにはそれ以上にやるべき事が残されていた。それは、不満がくすぶっている雲南州、チベットとの連絡の強化だった。

それで、一美たちの乗る船は、1日で広西チワン自治州に入り、そこと大都市である柳州コロニーに入った。
柳州コロニーは、広西チワン自治州の州都南寧コロニーに次ぐ規模の都市であり、年の流通貿易収支は、広西チワン自治州の中ではトップであった。
それで、内陸貿易の拠点地域であった。それゆえ、多くの交易品を越南商人に渡したり、チベット商人に渡したりする交易中継地としての役割も果たすようになっていたのである。
故に、多く地域からの陸上物資の集積拠点であるこの地域で、一美たちは実力者である千堂伊織に会う事になった。どうしても、あっておきたい人だった。
「なぜか、私にお会いしておきたい、と考えていたのですか?」
わざとはぐらかしたような言い方をしたのである。一美は、苦笑するしかなかった。まあ、こんな人物なのだろう。
「それは、そうです。」
あっさりと答えてしまう。相手側も含み笑いしてしまう。
「これは、一本取られてしまいましたね。」
まあ、何を持って一本だろうと、言いたくはなったが、それを笑いで消して…。
「まあ、とにかくですが、私も会いたいと思っておりました。これからの広西、および、広州含めて中華はどうなるのでしょうか?」
と一美に聞いてみた。
「おそらく、この期に及んでですが、中華は大混乱に陥ると思えます。それは、今の政府の考え方に、人々は何かを考えて、行動しようとしております。それで、私たちは、たくさんの人々と共に、この政府に異議を申し立て、彼らを変えようと努力しようと、考えております。」
確かに、と頷いている。伊織の姿がある。一美の言葉は抑えがちだったが、その裏に、『大波』を倒すと言う言葉が含まれていた。しかし、今は、大波を撃たないまま、圧力をかけるのが、上策だと言えた。それが、伊織には伝わっていた。

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