タイトル:紅巾乱戦勃発 28

その頃、福州を拠点としていた高田商団の元に重大な知らせ受けた。それは、福州の州政府からの緊急要請で、多くの軍兵の招集に関して、真っ先に攻撃を受けやすい福州の防備を固めると言うものだった。
勇策は受け入れて、多くの武将たちを召集し、意見を聞き始めた。その隣には軍師として勉強している孫嬪の姿もある。
「まず、彼らは、海から攻めてくる可能性が高く、広州にも、会場から攻めてくる可能性が高い。」
勇策は、そう述べた後、他の意見を聞く事にした。最初に、発言したのは直胤で、
「まず、この国の状況は、我々の想像からは大きくかけ離れており、その中で、おそらくですが、我々の街を攻撃したとしても、それは、徒労に終わると考えられます。」
と、『紅巾』軍に利がない事を説いていた。だから、防備を固めて備える事が必要だと彼らは考えていた。
また、啓宗からも、
「それから、私からもですが、各都市の状況は、悪くなるばかりで、普通に考えても、彼らが反乱を起こす事は目に見えております。しかし、この状況を考えてみますと、多くが、『大波』本国政府の政策によって、賊民となってしまい。それを毛嫌いする民がいると言う構造が出来上がっております。おそらくですが、彼らの考えている事と、政府の考えている事にずれがあるのではないでしょうか?」
と述べ、それに反応して、勇策が、
「本国政府と、民との間に?」
と聞き、啓宗が頷いたのである。
確かに、宗教、政治経済などあらゆる面で、彼らは制作を行ってきた。しかし、それが、中華族とのわだかまりを生んだり、それ以外にも、相容れない宗教を弾圧したりすると言う暴挙を働いていたと言う事にもつながるのかもしれない。
勇策にとっては、考えねばならない事が増えていた。
「ただ、我々は、この時代の中で何を考え、どのように行動するかを、自らに課すのが、今の道だと言う事だ。それゆえ、慎重に慎重を重ねるように、そして、行動することが求められる。だが、時期を考えることも大事だ。それゆえ、時期を見極めよう。」
勇策は、考えを述べ、来る時に備えると言う事を始めたのである。これは実際の戦いに備えようとしていたのである。一美も同じ考え方だった。つまり、同じ時代の考えを持っていた。

その頃、伊織には何かしらの感情が芽生えた。何かを欲する気持ちに近い。瞳が徐々に赤くなる。その変化に、一美は気づいていた。話している最中に刃が牙に変わり始めていたのだから、
「伊織様、あなたは吸血鬼の末裔ですか?」
一美に言われて、伊織は驚いた。
「牙が見えていて、分かってしまいますよ。」
思わず、鏡を見て顔が赤くなった。
一美は、思わず腕を差し出した。伊織は驚いた。一美が差し出した腕に、剣で一筋の傷をつけたのである。傷は傷でも少し深い傷である。
「かっ、一美様?」
その行動に、体が反応する伊織、なぜだろうか、一美の腕に、唇を近付けて、一美の血液を飲んでみた。
「一美様、私は、あなたの血を飲もうとしておりましたが。それはやめにしました。あなたの体は高貴な血が流れております。それゆえ、あなたの体には触れる事はできません。」
そこまで言われて、一美は、ただ、呆然としているだけだった。体の芯が熱くなっているのを感じ取ったが、その心を温かく受け取った。
一美の行動は、彼らには、理解が出来ないものだった。なぜか、それは王を目指すものには王道があり、王は得を施すと言う中国を含む東洋世界にはあり、それが徳の考え方だった。一美は、伊織に対して、
「それにおいて、私は苦しんでいる民を見つけたら、その人に施しをしておきたい。それは、私だけではなく、ほかの人々にも、多くを植え付ける力となります。ゆえに、私たちと、共に歩むには民の力が必要となるのです。そのための誓いとお考えください。」
と、自分の考えを述べた。
その後、伊織とは別れて、宿泊先のホテルに戻った。

その中で、一美は考え込んだ。チベット、中華を結ぶ線は出来上がった。しかし、広州にはイスラムの住む地域もある。例えば、代表的な交易国オスマン・トルココロニー帝国である。この国には、トルコ系住民が植民させて出来上がった国家であり、それが、このオスマン・トルコを名乗ったのである。それから、周辺地域を統合して、大国家を建国したのである。一美の頭の中で、トルコの3文字が頭から浮かんでは消えた。
トルコを一美が思い浮かべたのかには、当時の国際情勢が関係してくる。
ヨーロッパ諸国との接点が多く存在し、彼らの考え方に理解を示す人材が、多かったこともあり、多くの地域が、この国家から影響をもらっていたことも、トルコと親交を結ぶ理由になっていたようである。
また、近年では9年前に起きた「土波戦争」で、反宗教合一勢力の代表に上ったことで、国交を求める国が多くなってきた。
イラン、トルコと並んで、イスラム圏の大国がある。それが、エジプトイスラムコロニー王国である。エジプトもこの分離独立を強く求めている勢力で、トルコと組んで、イスラム教の本当の教えと、政治に関与しないという考え方を貫くことを理想として掲げ、事あるごとに、イランイスラム帝国を批判してきたのである。
一美の頭の中では、その2カ国に接触するほうが望ましいと考えるようになった。そのために、穂積に次のような手紙を送り、その交渉を担当してもらいたいという旨を伝えている。
〈拝啓
この手紙を読むときに、考えていることがある。それは、自分たちの主張や、彼らの政策に関しての情報を素早く手に入れ、そして、わが商団にも可能な答えを出すことが求められる。
ゆえに、我々は、この2つの国の代表と接触し、そこから、自らの国をどのように作るかを、考えるきっかけにしてもらえれば、私としてもうれしい限りである。その2国は次の2つを指す。
一. オスマン・トルココロニー帝国
一. エジプトイスラムコロニー王国
この2つの国であることを理解していただきたい。
敬具              北田 一美  
追伸
留守中に、何かあったら、一報をお願い申し上げる。〉
これを認めると、使者に渡して広州に届けさせた。この当時の通信手段は、モールス(電報)、ネット(メール)、郵便などがあったが、重要文書を書いていくと言う事で、使者を立てて、文書を運ばせると言う事を行うのが安全策だったのである。安全策と言っても、その使者が政府に通報すれば、一巻の終わりだが、無事に乗り越えられれば、なんとかなると考えていた。
一美は、2つの国にどう言った事が出来るのか、よく考えて、物資を提供することが必要だと、穂積はそれを考えながら、2つの国の大使館に向かうのと言う事になる。それだけでなく、この2カ国以外に、多くの大使館を回って、援助を求めていくのが近道だったようである。
そして、この援助が後々、大きな力を発揮する事になる。それは、3年後の事になるのだが、それまでには時間がかかる。

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