タイトル:紅巾乱戦勃発 29

その次の日、一美は、再び船を雲南州に向けていた。雲南州航路は、この広西チワン州を経由して、雲南州の険しい道を行くのであり、長い道を走る間に、情報を集めておく必要があった。
主に、『大波』政府の重要役人であるが、彼らの考え方が、どこまで人々から支持を受けているのかを、探りたかったのである。
と言う事で、船は西北に向かって走り始めた。雲南州は西北にあって、雲南州の西北西にチベットがある。その航路を6日でチベットに向かうのである。
しかし、この6日間で、どのようになるのかは、分からない。それが、この時代の分からない所だ。いつ、何かが起きるのか、全く予想がつかない。
しかし、この事態を、どう心得るか分からない。そして、この事態と時代を見抜くには、一美たちチームが、如何にして、多くの国と連携し、『大波』と言う腐った鯛を、どう追い詰めるのかに掛ってくる。が、それゆえ、彼女の破棄した書状も、おそらく、それに関しての事と言われているのかもしれない。
一美たちは、すぐに、チベットと、雲南州の昆明に到着期日等の書かれた書状を、送ったのである。それに対して、一番先に訪れる昆明コロニーでは、早くも返事を書き、一美の乗る船に送ってきたのである。
「さすがに、昆明からの書状は早いですね。」
昭代は、昆明の対応の速さに驚いた。
「確かに、この時間帯に、返事が届くとは、彼らもやる気かもしれないな。」
一美は、そう答えた。確かに言ってみれば、一美の考えのとおりだろう。そして、代表だけでなく、多くの民が、同じ考えを持っているのかもしれない。だから、一美には、この話はあり難い事だった。
「後、数日したら、昆明ですね。」
とクリフが、興奮したかのように話しかける。
「それほど、他の地域に行くのがうれしい?」
と優香が、まるでからかうかのように、いたずらに言ってみる。
それに、クリフが頬を膨らませて、
「いじわる言うな!」
と突っ込み、船内で大きな笑いが起きていた。大種光弘はその笑い声に、
「なんだか、みなで楽しく、話ば(話を)しているを聞くもので、おいどん(わたし)も、笑いば(を)こらえきれもはん(ないです)。」
それで、大笑いしていたのである。
「しかも、鹿児島弁で言われたら、ますます笑いますよ。」
とクリフがまたまた突っ込む。その為に、爆笑の渦に巻き込まれた。
まあ、この旅が、一美たちに、広い視野を与えるのは事実である。
そして、一美はたくさんの事を学ぶ事になりそうである。それは、この出会いが、彼らに多くの知識を与える事になろうとは、一美たちには思ってもいなかった事だった。

その頃、益州では、反乱の火種が、大きな炎となって燃え広がった。そして、その中には、地方豪族も含まれていた。しかし、宗弘たちがいなくなった益州で、アマルフィは奮闘し、なんとかなだめさせる努力をしていた。実は、彼も『大波』政府のやり方に疑問を持ちながらも、国家の為に、相手をなだめるしか今は方法がないと考えていたのである。
しかし、多くの民には、それが偽善であると、見られてしまい。しまいには、彼に対して憎悪を抱く人間もいた。
確かに、今は力を貯める時である。それをわかっていても、多くの人々は、今の状況にうんざりだと、言うしかなかった。
それはそうだが、考えてみれば、この状況を造ったのは、『大波』本国政府のイスラム優遇政策であり、その政策が、自分たちの首を締め始めていたと言う事に気づいていない、為政者たちに向けられたのである。
彼らは、益州紅巾軍と名乗った為、『紅巾』軍討伐を益州政府は考え始めていた。
「もう、これ以上、彼らの暴走を許せば、益州から反乱がはじまり、多くの州を巻き込んで、内戦に発展するのは明白です。しかも彼らには、今の生活を捨てて、新しい時代の扉を開こうと覚悟を決めている者も含まれているとか、これは、本国政府にとっても重大な事ですよ。彼らは、危険分子です。」
と報告する人間もいた。秘密組織の暗躍が、罪のない人の無為な捕縛を生み、そして、罪を着せられて殺されると言う事にもつながっていた。
アマルフィはどうするか分からぬまま、頭を抱えていた。この事態を宗弘は、どのように収めたか。頭ごなしに押さえつけるのではなく、譲歩して、事を収める事が出来なかったのかと考えるようになった。
一方、雲南州は、それ以上の危機に、立たされようとしていた。それは、雲南州の先住民が、『大波』本国政府の要請に応じて、軍を出そうとしたのだが、財政の圧迫している雲南州にあって、要請にこたえられない事が分かってきたのである。後々、一美は、『大波』の管理下から離れた雲南州を立て直すために、とある人物の母親の力や、商団の資金を借りて、産業振興に力を入れる事を発ってのけるのである。
しかし、この時点では、一美たちにはまだ知らない事であった。その頃、宗弘はすぐに会議を開いた。そこには、宗弘の部下たち利宗、智光他、多くの家臣が勢ぞろいした。
「今回の事態は、多くの点で、今以上にひどい有様になっている。それに比べて、益州では、『紅巾』と称しているものたちが、反乱を起こして大暴れ、これが何を意味しているのかは、皆にも分かると思うが、その為に、我々雲南州が、軍を出さなければならなくなった。しかし、我々が陥っているのは、財政状況の悪化にある。この事態と、軍を出す事は、まさしく、自らに十字架を架す事にほぼ近い。故に、今回は、財政難を理由に軍を出せない旨を報告した。」
それを聞いて、家臣たちは頷くしかなかった。多くの家臣たちが独自の調査を行って、財政の危機に直面している事を、肌身を持って感じたのである。それも、この時点では、その財政難は深刻なものであって、彼らには処理できるかが分からないと言った状況にあった。
一美は、その事をまだ知らなかったのだが、その人物の話から、財政状況の深刻さを悟り、援助を申し出る事になるのである。
それまでには、時間があるが、このまま、話を元に戻して、今の状況を続ける事にしたい。智光は、
「確かに今の財政状況で、軍を送るなら、出費は多くなるばかりで、資金は底をつきます。それ以外にも、武器の補修や、改修などに多額の労力を必要とし、さらに、多くの兵士を選抜させなければならない。財政が苦しい中では、命取りになりかねないのですよ。」
確かに、出兵には多額の出資が必要となる。兵士たちの給与、それから、軍の武器の補修や改修などにも多くの資金が必要となる。
「それだけではない。また、兵糧を送るとなると、それに掛る運賃などの代金も必要となる。これでは、多くの民を苦しませる結果になりかねない。」
ファーディナンドが、懸念を示していた。
「確かに、ファーディナンド殿の気持ちも分かる。これでは、我々に退路は与えないと言っても同じかもしれない。」
と弟のジョージも、懸念を示していた。そこに、
「殿、一美様からお手紙が…。」
と声を発しながら、書記官が走ってきた。一美様がなぜ手紙をと、その場にいた者たちには、疑問がわいていた。

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