タイトル:「広州軍」北田一美 05

チベットに向かっている一美たちの留守を託されていた穂積は、とある情報を入手していた。
「まさか、もう動き始めていたとは…。これは姉上に知らせなければ…、対応が遅れると大変な事になるぞ。」
どう言う事か、次の話を説明しておきたい。
それが、広州周辺と言うより、福州の周辺付近で、海賊と『紅巾』軍海上戦闘隊が、衝突していると言う話があったのである。これは、おそらく、海上戦闘に関する訓練の可能性が高いと、穂積は判断していた。しかし、福州の近くで起こっている事が問題となっているのである。それゆえ、兵装を解くべきではない、と言う啓宗の発言は正しかったのである。
それは、『大波』本国政府の警戒意識を強くすると言うリスクを背負う事になるが、安全策を優先したほうがよいと言う事である。
それから考えると、啓宗の選択は正しく、孫嬪にとっては、難しい選択の中で、押し切られたと言うのが本当の所だと、穂積は見ていた。そこで、穂積は、早速手紙を認めた。
とりあえず、
〈拝啓
ご多忙中にお手紙で失礼いたします。今回は、大変な事態を経験されるに至り、このような事態を迎えた同胞として、心配でなりません。ただ、この事態を楽観視するのではなく、我々からも、何か援助の手を差し伸べたく存じます。
それにおいてですが、何かある時は連絡をお願いします。
敬具〉
これを、郵便にて送ったのである。それがいつ届くかは分からないが、これで、なんとかできれば、と穂積は考えていた。
返事は、早くても1週間ほど待たないと、いけないと告げられたが、それでも、メールなどの検閲が開始されたと言う情報を受け取っている中では、この手紙が一番効果を発揮すると、穂積は考えていた。

その頃、福州では、対応が話し合われていた。
「どうする?」
と声をかけるものたちが、
「確かに、これは弱り目に祟り目です。」
と孫嬪が言うしかなかった。まさしく弱り目に、祟り目である。だからこそ、今回の事態に対してどう言った対策を出すかを考えようとしていた。
「まず、我々は、福州を死守する事が必要だと言えます。ですが、問題はこれが広州などに、波及すると、広州の軍にも影響が起きてしまうと思います。」
だから、このような状況の中で、如何に福州で被害を止めるのか。
「ここからは、軍師殿が音頭をとってくださいませんか?」
勇策は、彼女に戦略を任せる事にした。
「まず、やるべき事は、多くの商団を我々の側に取り込むと言う事です。それが始めると言う事です。それに、広州と広西チワン、雲南州が連携する事が求められます。」
それで、どうするか分からない。
「それを行うにはどうするかですな。」
しかも情報を集める上で、手紙を出すのは、原始的なものになっている今、どこかに助けを求めるには通信手段としての、異なる周波数の電波通信無線を使って、連絡を取る事が多い。
故に、ここは周波数の高い無線で、広州に助けを求めるべきか。それを考えていた。
「広州に助けを求めましょう。それが必要です。」
と孫嬪は言うしかなかった。

こう言った事が、起こっている福州から、遠く離れた旅の船の中で、その話を耳にした。
「そんな事が起こっていたなんて、知らなかった。それについて、勇策殿はなんと?」
と一美が、クリフに聞いてみる。
「対策を立てているとの事だそうです。どうやら、迎撃をするという事だそうです。だから、この事態をいち早く食い止めるために、必死になって、コロニーの周りを固めていると思います。」
しかし、十分とは言えない。それは、コロニーのどちら側から攻めてくるのか、検討していないと言う所にある。それが、勇策たちに突きつけられている課題であった。
だから、
「これについては、彼らだけでなく、我々にも、協力を仰ぐと思いますよ。それに、彼らは海側から来ると思いますから、彼らは、そこを重視するのではないでしょうか?」
と優香が質問をしてみる。
「たぶん彼らなら、それをやってのけるのだろう。おそらく、それから、海戦に持ち込むのが上策だろうな。」
おそらく、それでいくのだろう。だからと言って、彼らで食い止められる相手かどうかは分からない。それを知っているのは、勇策ではないかと思えた。それと、一美と、もう一人、穂積しかわからなかったのではないだろうかと、ゆうか、クリフには思えた。

その頃、雲南州では、宗弘たちが、広西チワン、広州、福州との連絡を密にするために、提携に関しての話を持ちかけようとしていた。それが、福州では、対『紅巾』軍防衛のために、徴兵した兵力を、福州防衛の援軍として当てようとしていた。それによって、福州防衛戦線に福州軍が有利になると言う事であり、勇策にとってはありがたいものだった。それだけでなく、穂積も、援軍の派遣を決めており、それに合わせて、広西を除く双州の兵士たちが動くのである。
しかし、この連携に関する決断は、雲南州の官僚と言う立場にある大和宗弘を厳しい方向に、向けさせた。だが、宗弘などにとっては、それが、中華族のためであり、自分のためであり、そして、多くの人々の意思であると言う事に他ならなかった。
(今は、変革を彼らは求めている。それに対して、我々は何もしていない。それにどうするかを決める上で、我々は、こう言った事を自分で決めねばならない!)
と心に決めていた。
他の家臣たちにも、同じ事が言えており、どんな事をされてでも、それに屈しないと言う堅い決意がみなぎっていた。
一方、上にある益州は、これに気が気でない。アマルフィは堅い表情で、この状況を見ているだろう。今まで仲間だった彼にとって、これは、裏切りとも言える行為である。
それに関して、どう考えるべきか、アマルフィはそれで悩んでいたのである。
それから考えれば、今の状況は最悪だろう。それを知ってか知らずか、宗弘は、一美たちとの連絡を密にしておくのが得策ではないかと、この方針に踏み切ったのである。
「しかし、益州は見て見ぬふりはしないと考えるべきです。なぜなら、南の動きには常に、気をとがらせております。だから、油断はなりません。」
ファーディナンドはそう言って、宗弘の決断が周りに与えている影響の大きさを、指摘した。
「彼らとて、同じ思いは持っているかもしれませぬが、彼らは、その中で国家を大切にする、と言う方針で来ていることです。だから、我々は、これから益州の動向に注視しなければなりません。」
ファーディナンドの言葉は、宗弘の心に重く響いた。確かにとんでもない決断をしたのかもしれない。しかし、自分の民族の為に、厳しい方向に舵を切った事を後悔していなかった。これは、自分の為ではなく、多くの人々の為だからと言う心で満ち溢れていたのである。

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