タイトル:「広州軍」北田一美 19

そのちずるも、自分の考えが同じ考えである事を示したが、綾音は、どこまで自分の考えと同じなのか、それが気になっていた。
「自分考えが、まだ、固まっていないかもしれない。それとちずるさんの考えとは、少しぼやけはしますが、あっている事には間違いないと思いますが、確かに、そうだと思える。」
ちずるは、頷いて、綾音の言葉を聞いていた。確かに、ちずるの考え方と、綾音の考え方が、同じ部分が多いとは限らない。だから、ちずるは、綾音の言葉に耳を傾ける事にした。
それで、
「私の話も、聞いてみて、それで、あなたの考えと会っているのか、それともす事違うのかを判断して、もらう方がよいのかもしれないね。」
それに、綾音は頷いて、
「私たちは、中華と言う国家だけでなく、それで、私たちは、多くの弊害を乗り越える為に、この状況をどうするかですが、私は、福州と広州などが連携して、『大波』を壊すしかないと思う。」
次に、綾音が、
「私は、考えている事は、この国家の改革です。壊す事は必要だと思えます。ただ、これでは、何もできないと思えるのです。」
と言ったのである。そして、ちずるは、
「それを私は、考える事に合致しておりますが、それに関してで、改革をしたとしても、一時的なものにしかならない。故に、私たちは、この国家事態を変える立役者にならなければならないでしょう。そして、それを実現するには、多くの人々の力がある。だからこそ、『壊す!』しかないと思うのが、私の考えです。」
だからと言って、綾音は、それを行うには、まだ時が早すぎると感じた。
「しかし、それだけだとすると、その後の国家の形成に関して、その国家をどのように作るのか、と言うビジョンをどうするかと考えていかねばならないと思う。」
それで、どうするかはちずる、綾音それぞれにあると思う。だが、その2人の考え方に、多少の隔たりがあるとしたら、ちずるは、何をしておけばよいのか、そして、それを言った綾音も何をするべきなのかを考えなければならなくなった。
2人は、その答えを求める為に、図書館に向かって歩き出した。今後の政治について、それから、経済について、歴史から学ぼうと考えたのである。
それで、彼女たちが探した書籍は、『史記』と半世紀前になって刊行された『六国史』と呼ばれる書籍であった。この『六国史』は『大波』が自分自身の歴史だけでなく、他の国家の歴史をまとめ上げたものに他ならなかった。
2人は、それを借りて、隅から隅まで読み始めた。それで、全てを理解できるのか、2人は考えていたのだが、それでは、全てを離している事にはならなかった。
それに、これらの考えを如何にして吸収するか、それから、決断してどう言った事を為し遂げていくのか、それが、2人に突きつけられている事であった。
そして、その『六国史』の量も、半端なものではない。大波を除いた6王朝に、周辺国を含めて50冊ほどの歴史書の大作だから、その項目ときたら半端なものではない。故に、時間がかかっても、それを急襲することこそ意義がある。だから、彼女たちは一生懸命になって、その本を読む事にした。
それでも、読み切れなかったものは借りて、ちずるの下宿しているアパートで読む事にしたのである。それにしても、綾音はその場所に行ってみる事にした。しかし、重そうな本2冊を、2人はそれぞれ持って、ちずるのアパートはアパートとは異なる趣のある建物に、ちずるは入った。
アパートではなく、コンドミニアムと言う建物だったのである。そこに、彼女の住居があった。つまり、彼女は、大金持ちのお嬢様なのか、綾音にはそう思えた。
「これ?」
それを察したのか、ちずるは、綾音に気を使っていた。どうしてなのかは分かった。綾音には、ちずるが高校生であるにもかかわらず、このような部屋を買える余裕がないのが気になったからだ。
「実は、自分の金で買ったのよ。」
綾音の顔が信じがたいと言うような顔に変わっていた。そう、彼女の正体は、
「私はね…、言うべきではないかもしれないけれど…。」
と言われ、口にしようとした時、綾音の持っていた本が崩れかけた。それに気付いて、ちずるは手を出したと言うよりは、綾音の腕に掛った手提げ袋を持ってあげた。両手のうち左片手を、持ってあげた。
「ご、ごめん…。」
顔を赤くした綾音を見つめるちずる、距離が近づき、唇が触れる寸前で、ちずるが空気を察して、顔を離した。
「ごめん、今、変な気分になっていた。だから、私はときどき男の感情が入る事がある。だから、その…、ごめん。」
ちずるに、男の感情が入る事があるのだろうか…。それはちずるは分からなかったのである。
それより、その本を部屋の中に入れて、必死になって読み続けて、その歴史などについて、数々の議論を重ねて言った。そこに偶然にも男が入ってくる。
「姉貴、どうしたの? 友達を連れてきて、何を語り合っているのさ…。」
それが、彼の弟らしい。
「あ、たゆら、今帰って来たばかりなの?」
そう言われて、たゆらと言う男は、
「そう、それだからこそ、気になっているではないか、姉さんの友達が、なぜいるのか?」
と姉のちずるに聞く。
しかし、議論に参加する気があるかどうかは未知数だ。だが、何の議論をしているのか、それは気になる所だ。
「たゆらも参加したいと思う?」
いたずらをする子供のような顔をして、ちずるは、たゆらを招く。それに、いやだと言うような顔をしながらも、
「分かりましたよ!」
と、ため息をもらしながらも、言うしかなかった。その議論は多岐にわたり、政治、経済、歴史などで、どう言った事になっていたのか、主に、それは、ある人の考え方と、似た考え方になっていたのである。

その考え方を持っている人物は、福州で軍略を考えている人物、そう孫嬪である。彼女も、同じ考えに至っていた。その意見書などに目を通していた。
今までの歴史を見てきた中で、どう言った事が出来るのかを考えていた。そこに、彼女の中学転入が決まった為、中学を卒業できる所には出てきたようである。だから、今、彼女は歴史を習う必要はなかった。だが、この歴史を習う理由は、この国家を何とかして変えなければならないと言うある種の衝動と言うものだろう。それに、この国をどうしなければならないのか、それを探す為に、歴史を学ぼうとしているのである。
E・H・カーと言う歴史学者が、ある書物でこのような事を書いていた。
「歴史とは、何を学ぶ為にあるのか」という項目で、
「歴史とは、現在と過去の対話である。」
と結論付けている。つまり、過去の要素から、自らの未来を見つめると言う事である。そして、その考え方は古くは『貞観政要』でも、指摘されており、歴史について真実を書かねばならないと戒めている文章が見える。
それを、孫嬪は身にしみて感じていた。

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