タイトル:「広州軍」北田一美 20

それで、孫嬪は、ある人物に相談する事を決めていた。彼女が相談を求めていたのは、その人は、戦線から戻ったばかりの人物であるそれが、広西から帰って来たばかりの勇策であった。その勇策が、彼女の相談に乗ってあげた。
「それで、君の導き出した考えは何かね?」
勇策は、孫嬪にその答えを出したのである。
「おそらくですが、これは、私たちの考え方かもしれませぬが、私は、この国家の多くの政策はすでに破たんしております。故に、この状況をどうするか全く、分かりません。だからこそ、と言う事は、私たちがこの現実を打開するためには、戦と言う事になります。ただ、時が今だと言うのではなく、数年先と言う事を考えていくことが必要です。」
確かにそう言うのが、正しいのかもしれない。
「君の導き出した答えが、これだと言う事だと言うわけで、その時が今ではないと、自覚しなければならないと言う事だな。」
勇策は、孫嬪の考え方を理解した。勇策も、同じ考え方でこの局面を乗り切ろうと考えていた。
しかし、その2人であっても、甘い考え方でしかなかったのである。確かに、今は状況で『大波』の国家は、もう長くないのである。
それだが、『大波』の軍勢は、決して侮れるものではない。軍勢の多くない福州、広州、広西、雲南の軍をかき集めても、10分の1にも満たないほどの勢力だから、まともにぶつかってしまえば勝つ事が出来ない。
それゆえ、今の状況は、全てにおいて、難しいものである。それゆえ、孫嬪と勇策は難しい判断を迫られていた。
もし、性急な軍事活動を展開してしまうと、『大波』本国から眼をつけられる。だからと言って、防御網を構築しないわけにはいかない。
それゆえ、出た結論は、防御網を一時的ではあるが、固め直しておく事だけだった。
(まだ何もできない状況であることには違いない。だが、今行動を起こせば、必ず『大波』から眼をつけられてしまう。…そうか、『相手も利用せよ』と言う言葉に従えば…。)
孫嬪は何を想ったのか、この事を考えついた。
(と言う事は、その相手、つまり、『大波』を利用するのが良いのでは?)
孫嬪は考えていたのである。と言う事で、それを相談する為に、孫嬪は勇策、啓宗等に相談してみる事にした。
「どこに、…と言うか、相手が分からないのではないか?」
その考えに、啓宗は異を唱えていた。確かに誰が相手になるのかが分からない。
「それは、『大波』です。今の国家と協力する事が、今の我々には必要かと存じます。」
それに、正善が目を剥いてしまった。
「ど、どう言う事だ!」
しかし、現実的な考えからすれば、孫嬪の考え方は、妥当だと言う事になる。
「確かに、妥当な考え方と言えばよいかもしれない。なぜなら、我々の軍隊は、まだまだ脆弱だから、ここは大きな組織に頼るしかない。だから、今の状況から考えれば、この形は妥当と言う事である。」
勇策の意見ももっともだった。それは、福州などの軍隊の総合計は、18万人ほどしかない。と言う事は、『大波』の傘下に一旦入り、それで様子を見てみると言うのが、孫嬪の出した結論であった。
その孫嬪が出した結論は、『孫子』の兵法を応用して、この状況で、どう言う手が、この4州の生き残る道でもあった。それは、一美としても、今の状況からすれば、やむを得ないと考えていたのである。

それに関して、一美は、広西から広州に戻ったのである。に日にちは8月12日になっていた。それにおいて、ある2人を呼んでいた。それは、託されてかくまわれていた朱蒙と秀万に一美は会う事にした。もちろん用件は、賦琿の事である。
「君たちを呼んだのは、樋賦琿さんの事だが、君たちは、私の判断した事をどう考えているのか? それを聞きたい。」
それを聞いて、2人は顔を見合わせた。
「私は、妥当な考えだと思います。実際に、私はどう言った考えを持つだけでなく、内部の実情を知る人物を、抱える事は、必要な事だと思えます。それから、孫嬪様からお手紙がありまして、『大波』の軍と手を携える事も、やらなければならないと、打診してきました。」
一美は、驚きはしなかったものの、
「確かに、軍隊の数や、勢力の差から考えると、この考えに私も近い。まだ、勢力を温存しておかなければならない。その為には、『大波』と組まざるを得ないと思う。」
と言うしかなかった。
今の所は、この選択が、一美たちを生き残らせる唯一の方法だと一美は考えていた。
次に、
「私も同じです。確かに、選択としては正しいですね。」
と秀万も同調していた。確かに、彼らの言う事にも一理はある。
「それは、そうだと言う事ですが、他の将軍だった方々はどう思っておられるのですか?」
2人は、再び顔を見合わせた。そこまで、言われた理由はどう言う事か、
「おそらくは、それに関しては、色々な意見がございます。だからこそ、私たちは、彼女を受け入れる事で、多くの意見を生みだす事が出来るのです。だからこそ、彼らの意見が、どうなるかどうかは、私には見当もつきません。しかし、それこそ、賦琿様の価値が見いだせる可能性があると私は考えます。」
秀万は、そう考えていたので、頷いたのである。そこに、樋賦琿当人が入ってきた。
「どうされたのか、気になりまして…、失礼しました。殿、福州は『大波』の軍門に入る事になるそうだと聞きましたが、ただ、その考え方をしていたとするなら、その数年後、の状況までも見ないとならないと考えられます。」
と述べた。
どう言う事かと一美は、賦琿の目を見た。
「つまり、これが、私も実際経験しているのですが、この時代に分かるのかもしれませんでした。しかし、そう考えていくと、国家の軍隊は、それぞれの領主から集めております。彼らの考え方は、彼らの考えに則った形で、軍を動かしておりました。おそらく、今回も同じ事になると思います。」
そこで賦琿は、言葉を切って、
「しかし、それは諸刃の剣であり、皇帝はそれを統括しているだけにすぎません。だからこそ、その領主の意見を尊重せざるを得ないという体質があるのです。」
と言ったのである。
一美は、それに対して、
「つまり、領主たちがどのように考えているのか、それがカギになると言うわけですね。それは時を経るごとに変化していくと言う事ですか。」
と質問をしてみると、賦軍は頷いた。
「それはどう言う事かと言いますと、彼らと皇帝家は、金銭の授受ではなく、官位等に因って、生活を保障し、その代わりですが、彼らは皇帝家の為に働くと言う関係が出来上がっております。だから、そこを崩すのも家臣の力です。」
つまり、家臣の力に因って、『大波』を内部崩壊させる事も可能になってくる。要は、そこで、どう言った方法を用いて、彼らを反体制に持っていくか、それに時間がかかると、一美は考えていた。

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