タイトル:「広州軍」北田一美 32

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一方、広州では、この一連の動きについて、なにか悪い予感がしていた。それによると、徐州に向かっていた討伐軍が、上海が攻撃された事を重く見て、徐州に急いで、攻撃を仕掛け始めたのである。
それで一美たちは、情報を多く集めていた。まず、徐州の状況、上海の状況だけでなく、南昌の情報も集めていたのである。
「上海の状況は、どうなっているのか、情報は入っていないのか?」
一美は、何が起きているのかを知る為に、気になっている事を聞いてみた。
「上海からは、多くの国家が貿易を停止し、国家貿易が成り立たない事態になり始めております。それに天津でも暴動が起きていて、現在、貿易港として機能しているのは、大連コロニーのみです。」
と兼人が、報告をしていた。だからと言って、この事態から見えてくるのは、『大波』自体の国家機能を破壊しかねない状況にまで進んできているのである。
それが分かってきた事から、一美たちは、それに変わる国家の可能性がある。それに群雄割拠を起こす可能性がある。それを一美は、見据えていた。
しかし、その可能性は、一美1人だけでなく、他の商団の代表にも、伝わっていた事である。しかし、一美の予想は裏切られる結果になった。群雄割拠にはならないまま、『紅巾』軍と『大波』軍のにらみ合いになっていたのである。
「なんだか、分からないままですね。これでは、どうするべきなのか全く分からないですね。」
と尋ねてきた昭代は、ため息をつくしかなかった。
それを見て、一美は、
「今は、情報が交錯しているのかもしれない。だからこそ、このような状態になっても、常に情報を手に入れる事が大切だと言う事を、我々は教わってきた。」
と口にした。商人は、常に情報を大切にする。一美は、その情報をどうするか、運用に因っては、とてつもないものに変貌すると考えていたのである。だからこそ、扱いには慎重にならなければならないのである。
だからと言って、一美は多くの情報を、集めてその情報をじっくり吟味して、飲み込む作業を行っている為に、その情報を生かす上で、新たな情報戦略機関を造る必要性があると感じるようになっていた。
つまり、一美は新しい情報組織の創設を急ぐべきだと、考えるようになっていた。それで、たまたま来ていた伊須磨射宗兼と、野上宗朝に、
「こんな相談をするのは、実は、大がかりな情報組織を作り上げていただきたいのです。それについて、あなた方の意見をお聞きしたいのです。」
それに就いて聞きたくなったのには、理由があったのである。
「それは確かに、今の状況を考えてしまいますと、我々は、このような考え方をしておかないと、いけないのかもしれません。一美様の考え方に沿うような、組織を立ち上げておきましょう。」
一美は、その言葉を聞いて、安心したのである。

その後、クリフと優香と共に、ある機体の製造工場を見ていた。主力の新型機の名前は「スカイフランカー」と言う名前になった上に、その量産機体も同じ名前になっていた。また、もう1つ、支援型の新型機も量産機は「ゼロフルクラム」と言う名前になっていたのである。
その量産化は、着実に進んでいたのである。それにおいて、武装関係の生産も進めてきたのである。例えば、大型のビームライフル銃、ビーム系統のサーベル刀剣発生装置、大型の機首兼用の盾、さらに副武装としてのミサイルの開発のラインが整っていた。
まさしくラインが、極秘裏に作られていたのである。現在の『大波』軍の主力は、戦闘機系ではこのフランカーのひと世代前の「スカイフロッグフット・バスターレボルバー」や、「スカイフィッターZ」のほかに、「スカイフラゴン・ストライクフィフス」と言った機体が、投入されていたのである。
それでは、攻撃でも不足する面があると軍事評論家は考えていたのである。それに、「スカイフランカー」は、大方の軍事評論家の予想を大きく上回り、攻撃性能も高い戦闘機として、期待されていたのである。
「それより、この機体の性能は、今までの機体よりも、大幅に改修を加えると言うわけではなく、新規設計と言う形で、先行試作機を製作したわけですが、今回は、それを修正して、生産すると言う事ですか?」
とクリフが、技術主任に尋ねていた。
「そうですね。先行試作機で集まったデーターをもとにして、改造機体の製作、新規設計などに生かしていくと言う事になりますね。それ以外に、それに似合う武器の生産なども生産させて、他の勢力に対抗させると言う事が、我々の戦い方であります。」
と技術者は言った。それに、一美は考え込んでしまった。
「しかし、この機体に合う兵器が、多いのか分からないので、他にもクラスター弾頭とか、魚雷とかを装備する事にもなるとしたら、私は考えたほうがよいのではないかと思えるのですが…。」
それを聞いて、技術者は考え込んだ。
「それが、事実だとしたら、一美さんの考え方では、それなりのコンセプトとした機体を生産しなければならないと思いますよ。」
確かに、そう言った形で種類を増やす事も必要になるかもしれない。つまり、海洋にも対応できる戦闘機を製作するべきである。
「それも、考える必要性があるかもしれません。『大波』は陸に強いけれど、水には弱さがあります。それゆえ、水に強い機体も作る必要性があります。」
と一美は、その事について、頷くしかなかった。

上海コロニーでは、約1週間が過ぎても、攻撃が収まらなかった。その中で、着実に、駐屯兵士たちの士気が下がっていく。それに、彼らにとって難敵は、けたたましい騒音。これが、神経をすり減らす事になり、これによって、彼らの活動を大幅に制限される結果をもたらした。
「畜生! けたたましい不快音で、神経が参る。これでは、事実上、音攻撃にさらされているのではないか!」
兵士の一人が、嘆く。
「確かにそうだ。彼らには、我々を参らせ、そして、彼らにいい風を吹かそうとしている。これでは、我々は、風にあらがいきれず、自分を見失って、そのまま風に乗って飛んで行こうとするわけだからなぁ。」
それは確かにそうだった。この状況では、確実に反撃も出来ずに、『紅巾』軍に飲み込まれるかもしれない。それが起きてしまえば、着実にこの基地も破壊されるだろう。駐屯している兵士にも被害は及ぶのは確実だ。
「それより、1人でも多くの市民に呼び掛けて、我々が守るべきものが何かを、説いていくことはできないか?」
と若手の兵士が言うものの、
「時間がないぞ、今のままで、そう言う余裕があったら、敵を倒す事が先だ!」
と喝を入れる上等兵もいて、どうするのが良いのか、悩む兵士たちも多かった。彼らの心には、もし自分たちの基地を守ったとしても、新たな考え方が市民に広がってしまい、その市民を撃つという事態に陥れば、彼らとて、1人の人間であるからして、自分たちの普段接している人々に悪い影響を与え、さらには、自分たちの命は助かったとしても、住民を撃った罪は残るのではないだろうか、そう言う考え方が、広まっていた。
『紅巾』軍が上海を攻撃して早くも1週間が過ぎ、さらに2日が過ぎた9月14日、広州では…。

9月14日、広州では、新しい軍隊として『広州地方自治軍』が組織されていた。
その中心には、北田一美がいたのである。北田一美は、広州軍の中心として、北田商団がその中心メンバーに入っていたのである。だからこそ、一美のブレーンであるラフェリア、クリフ、優香、穂積、兼人、昭代、一光、宗治、凛、茜、新次郎、ネギなどが参加していたのである。
そして、一美は、新たな気持ちで、広州軍を造り上げていたのである。広州には、新しい時代の扉を開く為に、動き始めたのである。
一美自身の、頭にはどう言った考えがあるのか、穂積は弟ながらも、一美の新しい時代をどう切り開くのか、それを見つめながら、自分が一時期だが、広州軍を指揮する立場に立つとは思っていなかった。そして、一美と共に、多くの苦難を乗り越えていく事になるのだが、まだ、一美はまだ、知る事がなかったのである。

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