タイトル:『紅巾』軍との対決 04

一美たちは、どうしてこのような状況から、『紅巾』軍に対抗できる勢力を造る事が出来るのかを考えていたのである。それは、一美の考え方にもあるのである。
一美は、多くの家臣たちを集めて、この後の事態をどうするか、どう考えているのか、それを家臣たちで話し合うと言うものだった。古豪の家臣たちから、新入りできた家臣たちまで、全てを集めて話し合ったのである。
「先ずだが、我々の考え方をどこまで理解しているのか、どう考えているのか分からない。だからこそ、今、我々などが一体、何をするべきなのか、それを話し合おうと思う。それで、皆の者はどう思っているのかを聞きたい。」
それからすべては始まった。まず手を上げたのは、家臣の1人、兼人だった。兼人が、最近の報告を始めた。
「まず、ほぼ間違いないのは、上海が陥落した事です。この陥落に因って、『大波』は大打撃をこうむっております。今の所、貿易港は天津と大連だけであり、彼らは財政面で困難な状況に陥っている可能性が高いと考えられます。」
それに端を発して、もう一人、庶民の目線から報告を加えた者がいた。それが、宗治であった。
「彼らは、多くの宗教関係者が、『この宗教には明日はない』と申しております通り、イスラム教のスンニ派は、政治と結びつきすぎて、彼らの思い通りになってしまっていると非難をしております。それゆえ、中華族は、この宗教との合一してしまった政治を、変えねばならないと考えているようです。」
実は、一美たちの考え方は、宗教面では、多くの中華族との考え方と同じであった。つまり、宗教の分離は必要だと考えていたのである。それ以外に宗治は、
「実は、イスラム教のシーア派とスンニ派の一部にも、この考え方を組む組織はいるそうです。それゆえ、彼らの中にも、『紅巾』軍に加わっている者もいるそうです。それゆえ、彼らも不満を抱えているのではないでしょうか?」
確かに、それは言えるかもしれない。彼らとて、暮らしを豊かにしたいと言う思いはあるはずである。だからこそ、彼らは、この組織に参加したのではないのか。それに、彼らには、生活苦と言う現実的な問題が横たわっている。それを解決しない政府に対しての、怒りが爆発したと言ってもおかしくないのである。だから、彼らの言おうとしている事は、生活改善に他ならない。それが行われていないと言う事から考えるならば、役所は民に対して、怠慢を働いた事になると、一美は考えていたのである。
「第一、生活改善を行うのが先であり、それの怠慢を行っていたからこそ、このような反乱に至ったと思えます。ですが、彼らは、中華族だからと言われて、差別も受けておりますから、彼らが蜂起をするのは流れにかなっていると彼らは考えているはずです。故に、ここは、彼らの意をくむ事が大事かと存じます。」
一光の言う事も、理にかなっている事であった。要するには、彼らは生活の改善を求めているのである。それがなければ、彼らは再び反乱をおこすのだから、それを逆手に取るのが効果的だと、こう考えるのが良いのである。だが、一美は、それが正しい判断とは思えないと考えていた。なぜなら、それを実現するのに、今の国教と言うべきイスラム教スンニ派の壁は必ず立ちはだかる。これが、壁となって、しきたりを壊す事を拒み続けているのである。
それに、それを信じている政治家も多い中では、そんなことはできないと言うのが、本当の所であった。だからこそ、改革が求められているのではないかと、一美は考えていた。
だが、一美自身も、それを否定するしかない状況に、自分が置かれるかもしれないと、自分自身に言いかけていた。
だから、一美は、悩みこんでいて、この会議を招集したのである。
「となりますと、彼らは一体何をすると、読むべきなのでしょうか?」
と1人の家臣が不安を述べた。
「確かに、我々が見るべき所はそこにある。御影殿ありがとう。彼らの考えは、おそらく、大『大波』の復活にあるだろう。皇帝を頂点とした中央集権体制を組み、それによって、支配体制を強化しようと考える勢力もいる。しかし、それを阻止しようとする人物も多くなるだろう。彼らとて、今回の反乱を受けて、中華族を積極的に採用するだろう。おそらくは、彼らとて、何ができるのかを、持て見る必要があると思う。」
一美は、その様に結論を付けていた。
「私もそれを民衆の心から読むべき所です。それゆえ、中華族の方に配慮する事を考えて来ると考えております。それゆえ、彼らのこの様子をどう考えるかで分かると私は、考えます。」
と述べたのは、彩で、それに、多くの重臣たちは頷く。続いて、
「それに、政策のみならず、軍の動きにも見なければならないと言った所も、注目するべき事が出来る筈です。」
と発言したのが、宗治であった。これは、軍の動きがどうなるのかについても、考えるべき所であろう。それを指摘してくれた宗治には、一美も感謝していた。
それに、
「それに、民政、財政の関係で何かが興ってしまうと、これからの国力が、落ちるかもしれない。だから、これからの事から考えれば、この時こそチャンスだと思えます。」
と発言したのが、ネギ。
「そのほかに、貿易関係にも目を向けないといけません。それに関しての、彼ら貿易に関しての情報は、常に注目してみておかないといけないのではないでしょうね。」
と、ネギと同じく、兼人も発言していた。
つまり、それぞれが、国家に何ができるのかを、考えながら、議論を深めていた。それはもちろん、この『大波』を新しい方向に誘導する為に…。
北田一美は、活躍の場を求めて動き出そうとしていたのである。

福州では、一美たちと同じ考え方を持っている高田勇策、小寺啓宗などが、協議を重ねていた。それは、上海陥落後、『紅巾』軍がどのように勢力を伸ばしてくるのか、それから、一美たちと同じように、『大波』がどう言う反応を示し、どう言った形で、対応するのかそれが気になっていたのである。
「孫嬪はどう思う。上海が陥落し、『紅巾』は我々福州に向かうのではないのかね?」
と勇策が質問を投げかけた。それに対して孫嬪は、
「ええ、今の彼らには、そのような余裕はございません。第一、彼らは上海地域と言う点を、手中に抑えただけで、軍事関連の施設についても無傷で手に入れておりますが、その周辺地域に関しての地盤固めに、相当の時間をかけないといけないので、出動は遅くなると考えるのが妥当です。少なくとも一月はかかるでしょう。」
と答えた。と言う事は、と口にした啓宗は、
「出足は、10月ごろその頃に、出兵と言う事になるのか…。それなら、兵力がどこまでになるのか。」
少なくとも、上海攻略にかけた、兵数は『紅巾』軍本体で3万、それに対して上海駐屯軍は、常備軍8万、遊撃軍6万の14万人と、それらからして上海駐屯軍が、有利と見られていた。しかし、遊撃軍は周辺都市から集められるという規定を考えると、周辺都市を攻略した『紅巾』軍が、上海に駐屯する兵力を襲うとしたら、その周辺都市の6万人が宙に浮く、それに、内部から破壊活動を始めた住民たちを加えると、その数は駐屯軍をはるかに凌駕する。だからこそ、その人たちをいかに取り込むかが、この跡の事につながると孫嬪は読んでいたのである。だからこそ、今以上に、『紅巾』軍と、『大波』軍の動向に注目するべきか、それが、一美たちには求められていたのである。

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