タイトル:『紅巾』軍との対決 20

その2人を、喫茶店の中に入れると、奥の席に2人を、そして、絢音、一美、霞の順に手前に座り、向かい合っていた。
「私は、聞きたい事があって、ここにいるのですが、あなた方は、何者なのですか?」
いきなり、ストレートを投げる投手の気分で、一美は、2人に質問をした。
「な、何って、あなたも、変な体をしているねぇ。」
思わず、虚を突かれて、一美の思考が一時的に停止した。
「それって、私が何者かも分かっていると言う事ですか?」
しかし、そこまではと言う顔を、青髪の女性は、ただ、黙り込む。
「確かに、私は、龍を持っている。だから、普通の人とは違うのよ。だから、私は、それを運命と受け入れている。あなた達も、私とは少し異なるけれど、特殊な能力を持っているはず。だから君たちは、戦いに持長けた人物だと言える。それで、君たちの正体が気になったのだよ。」
それを聞くと、2人の体がびくっと震えた。
「私たちが、何かと言う事を知っているのですね。私は、神名静流と申しますが、あの時の事を見ていたのですか?」
一美は、頷く。
「真ん前でね。何が起きたのかは、分かったような気がする。君たちは、対空飛行も可能な能力を持っている事だけでなく、戦闘能力も高い。」
それに、2人の体が少し震え始めた。どうしてそんな事を知っていると言うのだと、そんな表情だったのである。
「それで、君たちは、特殊な能力を持っている戦士だと言えるかもしれないねぇ。」
一美は、ずいずいと顔を2人に近づけていく。
「確かにそうだと言えるかもしれません。私たちは、淫魔ですから…。」
絢音と霞は、そして、一美さえ、思ってもみない答えが返ってきたのである。それは、彼女が淫魔と言う存在だったのである。
淫魔、本来は夢魔と呼ぶ悪魔の一種であり、男性型と女性型に分かれるのだが、男性型がインキュバス(Incubus)、女性型がサキュバス(Succubus)と言う呼び方をしたもので、その読み方は、ラテン語からの出展とされている。なぜなら、キリスト教にしか見られない悪魔だと言われている為に有名になったと言うそうだ。実は、他の宗教でも、アルプ、リリス、猫又と言った夢魔は存在が語られている。
まあ、その中で、2人はサキュバスと言う事である。それが、一美は、その存在の事をもっと知りたくなっていた。
実は、それを確かめる方法があった。それは、牛乳を置いておくと、それが何と精液に見えると言うのである。第一、これは、暗がりと言うのが条件である。
しかし、2人は反応しない。それもそのはず、まず匂いが違うのであり、これで反応はしない。
どうしようかと3人は、考え込んだ。それで、次の試験を与えて、彼女たちを誘い出す事にしたのである。
実は、この3人に与えた試験は、
〈一美の部屋に、誰も殺さずに、誰にも発見されずにたどりつく事。〉
と言うものであった。
つまり、敵に気付かれないで、敵の本拠地を、攻撃すると言う難しい任務を試験に選んだのである。一美が力を測りやすいと考えたからである。
それに、其の3人が、どう言った事をするのか、一美はそれに注目していた。
その日の夜、一美は自分の部屋に戻っていた。そして、護衛はあえて置かず、そのまま待ってみたのである。
そして、そのうち1人が、こちらに来た、と言う情報を得ていた。どう言う策で、一美の部屋まで来るのか、それが楽しみだった。その女性とは、誰か分からないが。

その女性、名は神名紗奈と言い、神名静流の2歳年下の女性だった。彼女は、桃色の髪の毛で、黄色いリボンを付けている。それがトレードマークのようだ。その彼女に2人の女性が、立ちはだかる。1人は、礼賦安、もう1人は、半エルフのクリフである。2人が紗奈の前で、姓名を聞いていく。しかし、紗奈は、何かをにおわせて2人を眠らせた。
体を変質させたのか、それとも何が起きたのか、2人は寝息を立てていた。実は、その2人も、寝息を立てる真似をしていて、紗奈は全く分からない状態で、その中に入り込んだ。そして、その事を予期していたように、罠が何重にも仕掛けられていて、そこをどうやってかいくぐるか、考え込んだ。先客はいない。それに、一美がなぜ、このような複雑怪奇な、罠をどうするのか、それが気になっていた。
一つ目は、回転扉、迷路のように入り組んだ商団施設、オフィスは、そことは別に設けられており、そこで取引を行う。ここは軍事施設である。そして、次は、赤外線センサーが幾重にも張り巡らされているのだ。戸、そして、壁に伝って、そして、その次には伏兵が配置されている。ただ、その伏兵も捕らえる為に、槍の代わりに、さすまたとこん棒で武装している点が、珍しい。
そこで、紗奈はすぐに変身して、自分の本来の姿から、淫魔の姿に変わって、そこから高跳びをしていた。すぐに羽が伸びて、そのまま上に向かって、飛び上がる。
さて、一美はどこにいるのか。その時、サーチライトが紗奈を照らすかのように、こちらに向けて光った。
「いやだわ。ここまで罠が仕掛けられているなんて。」
呟くのも無理はない。そのまま、光を避けるように飛び続けた。サーチライトも、紗奈の姿を追っている。しかし、どうした事か、疲れたのか、それとも別の侵入者が現れたのか、分からないまま、サーチライトは別の方角に、散っていたので、紗奈はそのまま、見つからぬように着地して、淫魔の姿のまま、一美の部屋を探していた。まず、嗅覚を使って、一美の匂いを見極めていく。その次に、どこに何があるかを把握しながら、触覚と飛行能力の両面を働かせ、すぐに一美がどこにいるのかを見極めた。
(一美さんは部屋の中にいる。きっと、いる。その上で動かない。)
と確信していた。実は、その試験を行う前に、一美たちは自己紹介をして、その場を後にしていた。だから、紗奈が一美の名前を、頭の中に入れていたのは、このような理由からだった。
一美は、一体どこなのか、それは静流も同じ気持ちで、探しているのに違いない。そう心に言い聞かせ、紗奈は、前に進み始めた。
そして、前に進み始めて少しした頃、ブザーが鳴り響いた。何かの警報かと、思いつつ、紗奈は、羽をはばたかせ、暗闇に一旦身を隠した。その下では、姉の静流が、淫魔から普通の姿に戻り、赤外線のセンサーに何かを飛ばして、赤外線のセンサーを無効にさせてしまい。その隙に、奥深くに潜り込むと言う事をやっていた。だが、その行為自体の効果は、限定的であって、掴まってしまったのである。
(お姉ちゃん。早く捕まったの…、助けてあげられないわ。)
と呟くしかなかった。それは、当然の事ながら、この試験は掴まってはならないし、捕まるのが嫌だからと言って相手を、殺してもいけない。その試験だったのであるから、むやみやたらに、罠を破壊する事は出来なかった。
つまり、罠自体を掻い潜って、そのまま、一美の部屋にたどりつく、と言う事をやらないと意味がなかった。
このまま、紗奈は、淫魔の姿で、一美の部屋の近くに降り立つしかないと考えていた。そして垂直に飛び、一美のいる位置を確認して、そこに向かった。
まるで、小さなジェット機のように、罠をくぐっている紗奈は、赤外線のセンサーを巧みにかいくぐり、何もセンサーの張っていない区域を見つけて、そこに着地した。
ゆっくり、静かに、そして、歩きだそうとしたその時、後ろから、
「動くな!」
と呟く声がした。この時、一美の部屋は、すぐ目の前にあったのだが。

そのまま、紗奈は、動かない。その「動くな!」と言った人物は、凛で、紗奈は淫魔の姿のまま、両手を上げた。実は、凛の手には剣が握られていたのであり、動けば突くか、ライフルのように光が放たれて、紗奈の体を貫くのであるから、絶対絶命と言う所であった。
しかし、それがどうした事だろうか、勝手に一美の部屋の扉が開いた。それに凛は驚き、紗奈を見ようとする。紗奈を見つめる目は、驚きと同時に、紗奈に対して敵意をむき出しにしたのである。
だが、これに紗奈は反応しているのだが、紗奈はその事を気にせず、歩きだす。離れてしまっても、剣の先は、紗奈の背中に突き付けられたまま、動こうとはしなかった。故に、紗奈は、そのまま歩きだし、一美の部屋の中に入った。
「たどりついたね。最後の最後に、凛に見つかったとは、さすがの凛も、能力が高いと言う事を証明したものだ。」
と言ったのだが、
「紗奈殿の能力も高かいと思うよ。あの扉が勝手に開いて、風が吹いたのかと思ったくらいだ。」
それより、他の2人は、どうしたのだろう。それが紗奈には気になる所である。
その2人は、色々とトラップに引っかかっていたようだ。何度もそれを、外しては引っかかり、ついに、出られなくなったみたいである。それで、何とかたどり着いたのは3人のうち、紗奈1人だけだったのだ。
「まあ、一様数人に見られたと言うが、合格としておこう。それに、凛も驚愕して、地面にへたり込んだらしいし、誰も傷つけていないから良しとしておきたい。だが、凄いものだな。そなたの能力は。」
と一美に言われて、紗奈は、顔を赤くしていた。
「おほめになって頂いて、ありがとうございます。私たちの能力が高いと、認めている事を光栄にもいます。」
紗奈はそう言って、一美の元に歩み寄った。凛が、剣の塚に手をかけるものの、一美はそれを手で制した。一美は、紗奈の体から、何かが香り立つのが分かっていたが、一美は、
「紗奈殿、私は、この国を変えたいと思う。故に、人材が必要だと言える。どうだ、この国を変えてみないか?」
紗奈の顔を、一美は見つめて、誘いを出してみた。これが、その後の紗奈、それから静流達を変える。事になるようである。

この記事へのコメント