タイトル:『紅巾』軍との対決 24

その方法とは何か、一美は気になった。そして、ラフェリアが、口を開いて、その事について話し始めた。
「それは、蝶子様の体を、一美様の体で包み込み、その上で、一美様から気を送ってもらい、治癒させる事が肝心です。つまり、一美様の体から気を放たせ、それを蝶子様の体に当てて奥深くまで沁み渡らせて、体を治すと言う事です。」
つまり、龍の力を使って、蝶子の体を治すと言う事である。それだとしたら、一美の体が、その能力に耐えられるのかが問題である。
「それでは、霞さん、絢音さん、凛さん、茜さん。お願いですから、あなた達の力をお貸し願えないでしょうか、できれば。」
とラフェリアは、4人に協力を求める。確かに、一美1人ではどうしようもないものであり、一美だけでは、気力を賄いきれないからである。だからこそ、4人の協力、それにラフェリア自身も、その作業に協力する事になったのである。
全ての扉が閉め切られ、全員が、気を送る為に裸体をさらす事になった。これは、気を送り込む為の、方法そのものだったからである。
そして、一美は、蝶子の体を抱きかかえ、抱きしめると同時に、ラフェリアを含めた5人の左手が、一美の背中にひっつくかのように、添えられていた。
「まず、我に光を求め、その光を、かの者に与えよ。そして、かの者を救い給え!」
と一美は呟いた。一美の所に多くの龍がやってきた感覚を一美は覚えた。
このまま、一美は意識をする事無く、何かが集められている上に、体がポカポカと温かく感じられるようになった。
どうした事か、そのポカポカした状態が、そのまま続き、一美と蝶子の体に染み込む。だが、何も興奮状態も起こらず、そのまま、光の塊に包まれていた。目をつぶっても眩しいくらいの光が、一美の中で作られ、それが一美の全身を通して、蝶子の体に注入されて行った。
蝶子も同様に、痛みもなにないまま、一美に体を任せていた全てが終わるまで、一美たちは、じっとした状態を維持し続けた。
始まってから、10分が過ぎ、20分が過ぎ、はたまた40分もの時間が過ぎた。
凛、茜、絢音、霞、ラフェリアの5人がそっと、一美の体から手を離した。
「軍師殿、もうよろしいのでございましょうか?」
と凛が聞く。一美の体は、まだ光り輝き続けている。
「私たちのなす事は、全て、やり遂げた。後は、一美様の力と、蝶子様の体の生命力にかけるしかありませぬ。」
とラフェリアは、凛に述べるしかなかった。
「そうですか。」
と茜は、呟くが、その隣にいた綾音は、急に倒れ伏せてしまった。
「大丈夫?」
茜は、すぐに絢音の下に駆け寄った。絢音は、すぐに寝かされる事になった。おそらく体力を減らしてまで、気を送り込んでいたのだから、体の負担は高かったに違いない。
「霞殿は、大丈夫ですか?」
と凛が聞くと、霞は頷いて、
「こう言った事にも慣れておりますから、大丈夫かと存じます。」
と述べた。そして、一美の方に目を向ける。
「一美様の体が、あんなに光り輝くなんて、私にはまるで夢を見ているような気がしてなりません。」
と優雅に述べた。それにラフェリアは、
「確かに、そうだと思います。私たちの力も借りて、戦っているのですから、私は彼女の元で、色々と知恵を出せるようになりたいですね。」
と自分の心配事みたいな事を述べてみた。それに、霞と凛は、くすくすと微笑んでいた。

それから時間が過ぎ、一美から放たれた光は、そのまま、まるで消えるように、引いていた。そして、完全に光がなくなるまで1時間、計2時間がかかっていた。
それに、一美の体力が徐々に減っていた。そのまま、床に倒れるような感じで、一美は座り込んだ。
「一美様。どうなされましたか?」
と凛が駆け寄り、ラフェリアまでもが駆け寄っていた。覗き込む顔、そして、一美の瞳には、一美たちの無事を心配した5人の姿があった。
「軍師殿、やっと帰還したよ。ありがとう。それより、私も手伝うから、蝶子殿をどこかに寝かさないと、風邪をひいてしまう。」
と言って、起き上がろうとした。しかし、バランスが取れないまま、足元を取られてしまう。周りの4人が慌てて、一美の体を抱える。
「一美様、あまり無理をなさられてはいけません。弱っている中で、運動を為されますと、その後に影響を残します。」
と、ラフェリアは忠告していたのである。今回の治療措置を行った為に、一美の体力の大部分に頼ってしまった所がある。それゆえ、体を動かすべきではなく、安静が必要だと言う事を、ラフェリアは説いたのである。一美は納得し、蝶子と同じ布団の上で寝る事になってしまった。

それから、一美は数時間ほど眠っていた。いつの間にか、蝶子に因って、唇を塞がれたと言う事にも気付かないほど体力を消耗していたのである。
蝶子も同じく眠っていたままで、微妙に、口を動かす程度であった。今日も仕事があるはずだが、それももはや難しいものになってきた。そこに、雅太夫ともう一人、金髪めいた女性が駆け込んできた。遊郭を支える看板娘のようである。
「『胡蝶』ちゃん。どうなっているの? あなたに今開けられると、大変なのが分からないの?」
文句を言ったようにも聞こえたが、それを、霞が止めた。
「今は、2人とも病身です。大声を響かせてしまえば、負担が重くなります。お控えなされませ!」
と鋭い声で、睨みつけた為に、金髪めいた女性は、蝶子―ここでは、「胡蝶」が正しいだろう―を、涙をため蝶子の体に手を乗せて見つめていた。女性は蓮華と名乗っており、と言っても、源氏名で、蝶子と同い年のライバルであった。
今回飛んできたのは、体を回復させる為に、蝶子が出たきり戻ってこなかった事が気になって、彼女の元に飛んできたのである。
今まで、仕事をすっぽかすとかなどをしていない蝶子を見てきた蓮華にとって、今回の事態は、驚きをもって見ていたに違いない。無理をし過ぎていると言う事はうすうす感じ取っていたが、まさかここまで、病状を悪化させていたとは、信じるには時間がかかった。
(胡蝶! 死なないで!!)
と雅太夫は、心の中で叫んでいた。
それに、呼応したのか、蝶子はゆっくり目を開いた。
「雅お姉さま! こんな姿になってしまいまして、申し訳ありません。」
と、お詫びの言葉を述べた。
「いいのよ。それより、一美様の具合とかはどうなの?」
と雅太夫は、蝶子に尋ねる。それを聞きハッとして、横にいた一美を見た。一美は、まるで死んだように、眠っている。そう言えば、一美の唇を奪ってしまった事に気付いた蝶子は、顔から火が出るように赤くなった。
「『胡蝶』ちゃん。どうしたの、顔赤いよ。」
と蓮華が、いたずらっぽく疑問をぶつけていた。少し考えて、蝶子は、
「『蓮華』ちゃん。私とんでもない事をしたのかもしれないけど、一美様の唇を奪ってしまったの!」
と告白していた。一瞬、全体が凍りつき、霞の目が、蝶子から動かなくなってしまった。
「ど、どう言う事?」
と聞こうとする者の、それに、何者かが反応を示した。全員が見てみると、それは、一美が目を覚まし、全ての様子を見ていた事に他中らなかった。
「どうかしたの?」
と聞く、そして、体力の回復した蝶子の姿を見て、一言、
「よかった。」
と口にするだけだった。

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