タイトル:広州迎撃戦 11

一方、広州では、このような事を見越していた為か、一美達は早速商団の護衛軍の調練の回数を増やし、一美自ら、陣頭指揮にあたっていた。
遂に、戦場の空気があたり一面に漂い始めた。もうそろそろ、戦が起きると言う事を、多くの護衛兵たちが感じ始めていたのである。
だから、この状態をいち早く脱出するにはどうすればよいのか、それを視野に入れたほうがよいと、ラフェリアは考えていたのである。さらに、多くの商団との意思疎通をしておくべきだと主張したのである。
「して、ラフェリア。その根拠を聞かせていただきたい。」
と一美は聞いてみた。ラフェリアは次のように答えた。
それは、彼女なりの考えに基づくものであった。
「私は、いままで考えていた事を、述べてみたいと思います。今、『大波』が全ての世界に、覇を唱えられるほどの国家ではなくなりました。これは、多くの事例から明らかになっています。それゆえ、私は、『大波』に対して宣戦布告しないのが上策だと言えます。宣戦布告をすれば、この広州を火の海にさせてしまうからです。まず、この策の第1点目は、『大波』政府に我々は戦わないと言う事を信じ込ませる事にもなります。問題は、そのタイミングです。つまり、相手方の出方で、変わると思います。だから、その点を、どう言うタイミングで見極めていくかです。」
と述べた。確かに、それは的を射ている。
と思った瞬間、知らせが飛び込んできた。何と益州と雲州の州境で、衝突が起きたと言う知らせだった。
この知らせをいち早く耳にした一美は、情報収集を徹底するようにと、命令を出して、その詳細を詳しく、報告させよと命令をかけたのである。
その雲州では、どうなっていたのかと言うと…。

衝突は、旅軍門で起きた。両軍は境界線で数度も衝突したのである。だから、事態をどう動かしたとしても、軍を派遣して雌雄を決するべきだと言った見解が両軍から出ていた。それは、この戦乱を大きくしてしまうと言う危機感を持っていたからである。
故に、この事態が大きくなれば、大きくなるほど政府軍が討伐に乗り出してくるのである。州政府軍の上に、国家軍があるという軍の構造になっているのである。
それゆえ、州政府軍も下手に動く事が出来ない。だから、国軍に協力を仰ぐ事になるのではないか、そうだとすると、益州軍はその影響力をそがれてくる。
反転すれば、雲州軍にとっては、その敵が、自分達の前に所属していた場所で、同僚だったもの達ばかりだ。それが、今は敵と言う、妙な展開に同僚たちは戸惑っている。それは相手とて同じ事、だから、お互いに攻撃を仕掛けられなかった。
それに、この事件自体が、広州迎撃戦にも生かされると言う事を、その場にいた士官たちには思いもよらない事だった。実は、ここから一美達の抵抗が始まるのだから…。

一応その当人は、結果的には、その事を1週間後に知るのであるが、一美は、南の地域の利点をいかに生かして、どのように戦うのか、それが分からないと考えながらも、一美は、その打開策の策定に向けて、歩みだしていた。
そんな事を知ってか、一美が呼び掛けもしていない中で、2人の人物が一美の元を訪れた。道源寺宗治と小柴兼人の2人が、一美の様子を見に来ていたのである。
「一美さまどうなされたのです。何かあったと思いまして、来てみました。ラフェリア殿も来ておりますよ。」
一美は、宗治の声に反応して、顔を宗治方角に向けた。
「実は、君達から意見を聞きたくて呼んだのだ。私は、これから国家とどう戦うのか迷っている。大波は、今までの国家とは異なり、宗教で国を統一しているから、これを崩すには時間がかかるだろう。」
と言葉を切ると、すぐに、
「だからと言って、何もしないとなれば、中華の人々をまとめられない。それがジレンマのように、私の頭の中を巡ってしまう。どう崩すのが良いのか、知恵を貸してもらいたい。」
と言った。2人とも、もともとから考え込む癖があったのか、その話について、真剣に考えていた。そして、約10分が経ち、2人の考えがでそろった。
「まず、私の意見は、宗教の考え方をまず捨てる事です。まず、宗教で統一された国家に対して、どう言った結論が出てくるのかは、まだ、はっきりしていない事だと思います。それに、アラーの神を信じている人がどれほどいるのかについては、実際政府が調査した記録が残っていませんし、宗教に分け隔てなく行った方がよいと思います。」
これが、兼人が出した答えだった。続いて、
「私も、兼人殿と同じ意見ではありますが、同時に、社会的弱者の人たちの主張もするべきです。特に、この国家は、女性に対する権利を損なってきました。それだけでなく、遺伝子の変異によって産み落とされた人々の権利も保障しておりません。ですから、彼女達の為にも立ち上がらないといけません。」
と意見を申し述べたのである。
2人の意見を聞いて一美は、2人の意見を聞いてから考えてみると、2人とも宗教という枠組みを超えるべきだと言うのであった。
それは、ラフェリアも同じ考えを持っているだろう。そうこれは、一国民として扱うべきだと主張しているのである。
それだから、その中には、宗教の概念は、根底から崩れる為に、声高に宗教を主張するべきではないと言う事になる。
「私は、2人の考えと同じ考え方を持っております。2人に言われてしまいましたが、私は、もっと踏み込んで、中華に定住する他民族にも子をかけるべきかと存じます。それに、多くの商人達のネットワークを使って、情報を共有する事も必要かもしれません。ただ、単に発信するだけではなく、それぞれの人々の意見を伺い、そして、それに自分達の意見として出していく。そして、そのやり取りは手紙にしておかないと、見破られてしまいます。その対策をきっちりと立てておかないといけません。」
と彼女は、2人の意見に自分の考えを加えた意見を述べていた。
確かに、商人達の意見も聞くべきであり、その意見が、一美達よりもすぐれている可能性もあるからだ。だから、ラフェリアの意見は、的を射ているのである。逆に、2人の意見も尊重していた。第一、ラフェリアの考え方も宗教に頼らない国家統治を目指していたからだ。
それに、在留する外国籍の人材をかき集める事も必要だと言う事になる。それに対して、どのような対策を取るか、その為に、一美はある人物の所に出向く事を決意した。
その人物とは、金麗尭ではなく、宋朱蒙であった。通訳として金麗尭は一美のお供に回ると言うのである。
それにしてもだが、他にもこの土地に在住する在華異国籍民族の代表者に会う事にしようと決めていた。それにしても、この所だが兼人が供としてついてきている。何かあったのか、一美について行く事が多くなっていたのである。どうしてなのか、一美は兼人がついてきている事に、疑問は持たなかった。
ただ、この男には別の理由もあったようだ。それが何かであるが、実は一美を守りたいという一心で、一美の警護にあたっていたのである。それに、兼人が一美を好きになっていた事も影響していた。その証拠に、一美の顔をじっと見ていた。
「どうしたの?」
そう一美は聞くと、兼人は顔を赤くする。
「な、何でもないよ。」
と兼人は、知らぬふりをしていた。
どう言う事なのか、気にはなるがそのまま、供をさせていた。
そのまま、宋朱蒙の元を訪れた。その朱蒙も、今やこの広州の風土になじみ、中華語学の習得に余念がない。
実際、中華の構成する母体として、地球の人種の内、日本などの東アジア地域、ヨーロッパなどの地域の人々などが混ざった事によって、日本語が、構成する人々にとっての標準語となったのである。そして、それによって多くの人々の言葉が、日本語にとってかわったが、新地球宇宙統一機構では、その他の言語も使用できるように配慮されていた。それが理由なのだが、朱蒙も日本語を学習できる環境が整えられていた。
「それで、一美殿は、我々と共に力を出してみると言う事ですか。」
一美は頷いて、その話を始めた。その話の中身は、宗教上の対立を出さない。そして宗教の考え方については、それぞれの国民の意思に因ると言う事を主張し、その次に、それに関してのさまざまな目標を、掲げていたのである。
続いて、多国籍在住民の取り扱い、そして、商人達の説得が欠かせないと説いていた。
「それはそうだと言えるかもしれません。ただ、事態は急速に悪化の一途をたどっております。我々は、急速に悪化する事態に対処せねばなりません。」
と、彼に述べた。朱蒙は、
「確かに、そうでしょう。今、起きている事態に対応しなければ、我々は潰される可能性が高いでしょう。対応する事としては、大波が何を考えているのか、を分析する事が重要になると思います。」
と答えていたのである。
だからこそ、多くの人々の結束が必要だと、一美は訴えていたのである。
「常に、私たちは大波の動向を常に注視し、対策を練りたいと思います。」
と一美は言って、3人は朱蒙の元を辞していた。

そんな事で、2人は返ってきた。一美は兼人に、尋ねてみた。
「兼人。1つ聞いておきたい事があるの。」
兼人は、何の事か分かっていた。
「君に付いてきていると言う事?」
一美が頷いて、
「なぜそこまで…。」
と言葉に出して、疑問を口にする。
「それは、君を守りたいからだよ。だから、その為に、自ら志願しているのだから…。」
と少し顔を赤らめた。それに、少しほほを赤らめた一美が、
「もしかして…、私の事が好きなの…?」
と聞いてみる。兼人の反応が少しおかしくなっていた。2人の間に、微妙な且つなぜかときめくような、そう言う感情が渦巻いていた。
「だから、私は、兼人がどうして、このような事をするのか…分からなかった。だけど、私の事が好きだと言ってくれて、私は嬉しい。私も兼人の事が好きなの。」
思わず、自分から好きと言ってしまった。それに反応した兼人は、思わず目を見開いてしまった。
「一美…。」
兼人は口にしたものの、どうしてそう言う事になったのかが理解できなくなっていた。自分が言おうとした事は何だったのか、それに、自分が成し遂げたいのは何か、答えは、一美と共に世界を変えていこうと言う意思に、答えられるかどうか、それが気になった。
しかし、逆にそんな事を考えなくてもいいのではないか、そう考えてもよいと、兼人は判断していた。
「それより、私は自分でもわからないけれど…。」
兼人が何かを言おうとしていたのに、一美は気付き、
「兼人、敬語はここでは使わないで、女としての私を見て。」
と逆に、言われてしまい。兼人は顔を真っ赤にした。
「分かった。一美、僕は君を守りたい! 絶対に守って見せる!」
と言いきった。それに対して、
「守ろうと、堅くなるのはいけない事よ。」
と一美は、兼人に無理をしてはならないと、言ったのである。
「うん、それだったら、僕の側にいてほしい。いや、君の側にずっといるよ。」
そう言うと、兼人は、一美の体を抱き寄せた。
「かっ、兼人…。」
一美は、何が何だか、分からないまま、抱きしめられていた。それが何かを理解するのに、少し時間がかかってしまった。
一美は、兼人の情熱がこれほどだとは、思っていなかった。キスをしたくなる…、そんな衝動が、彼女の心の中に芽生え始める。
今度は、一美の体が、兼人からなかなか離れようとしない。しかし、顔は一旦離した。何か言おうとするのではと兼人が考えるいとまもなく、彼女は瞼を閉じて、唇を近付けてきた。

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