新シリーズ 平和と戦争の間で揺れた日本 06-4「和平交渉と憲法で揺れた時代」

本日の話題の2本目は、今回より週刊連載体制に移行した「歴史もの」の新シリーズの第30回です。
 
昭和391964)年12月から、本交渉へとつながる第7次日韓首脳会談が半年にわたって開催され、翌昭和401965)年220日に、「日韓基本条約」、正式名称「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約」が締結され、同年622日に日韓での文化財及び文化協力に関する協定が締結されるところから始めます。
 

実際に、東京五輪の閉会から、1か月後に開催された第7次日韓会談まで争点となっていたのは5つの歴史問題でした。ここで、終戦以降の大韓民国と、日本の関係を振り返ってみましょう。

昭和201945)年8月、日本の統治下から、連合国軍統治下に入った旧大韓帝国は、旧ソ連の統治下におかれた北部と、アメリカ合衆国などの西側諸国の統治下におかれた南部に分断され、北緯38度線を境に昭和231948)年に、朝鮮民主主義人民共和国と大韓民国に分かれたことから、イデオロギー対立による「朝鮮戦争(チョソン動乱)」が起こります。
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/1/11/155mm-SPGs-north-of-seoul-195105.jpgそのころの日本では、その特需に支えられて経済が活性化していきますが、大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国は3年の戦争で、焦土となってしまうという悲劇を経験します。
その中で、日本が戦争責任を果たさずに、アメリカ合衆国などによる平和条約の締結は、誠実性を欠くという見方をしていた大韓民国政府に、アメリカ合衆国は「朝鮮は大戦中、実質的に日本の一部として日本の軍事力に寄与した」と主張していることも、その背景にあると考えられますが、アメリカ合衆国の主張することは「日本による植民地は日本領と同じ」という考え方に基づくものだったわけです。

その根拠となった「日韓併合条約」などを含む問題から入ります。
まず、「日韓併合条約」(明治431910】年)の問題や、以降に締結された諸協定は日韓会談で、「もはや無効」だという基本的な部分で一致していたのですが、その発効時期がいつなのかで、両国の主張は対立する格好となっております。
大韓民国側の視点では、終戦時点で無効という見方をしているのですが、日本側は日韓基本条約締結以後無効になるという見方です。この理由は、歴史学者の藤井賢二氏は、このような乖離が生まれた理由として、大韓民国が「連合国の一員」という意識があり、それを位置付けようとしたことがあると指摘しており、それが旧条約向こうの主張は、連合国への位置づけのためには妥協も許さないという姿勢の表れという見方だといえます。
続いては、日韓に関しての流出した文化財に関する問題です。こちらは、この交渉で「日韓に関しての1321点の文化財を韓国側に引き渡す」ことで解決を観ますが、当時の椎名悦三郎外相は「返還する義務は毛頭ないが」と前置きした後、「韓国の文化問題に関して誠意をもって協力するということで引き渡した」と述べており、交渉では、韓国側が「返還」にこだわったことに対して、日本側が「贈与」という表現でとどめたいと主張したので、折衝を重ねた結果「引渡し」で落ち着くわけです。
この後に述べるのは、個人補償の問題です。現在この問題は、「従軍慰安婦問題」とも絡むのですが、この条約では「個人の賠償を放棄する」という点で決着しました。これには、かなり難解な交渉から導き出した答えだったのです。

http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/8b/Masayoshi_Ohira_01.jpg
当初、日本側は「韓国側からの調者名簿などの資料提出を条件に個別賠償を行う」と提案、大韓民国側は「個人への補償は、わが政府が行うので、わが政府に一括で支払いを」と要求して、対立することになります。また金額も、現金21億ドルと現物返還請求を行ったのですが、一括の支払いは承諾したものの、現金と現物を日本側は拒否してしまいます。実は、『新シリーズ 平和と戦争の間で揺れた日本 06-3「和平交渉と憲法で揺れた時代」』で、ご紹介した「金・大平メモ」がこれに当たるわけです。この結果で、日本との経済協力による賠償が行われることになり、日本側は「独立祝賀金」と「発展途上国支援」という形で、合計8億ドル(無償3億、有償2億、民間借款3億)の融資で妥協することになったわけです。

まだまだ、条約に関しての議論が続きますが、次回「06-5」では、後に経済協力などの視点を中心にお話しします。

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