タイトル:一章 主要都市広州 8

どうしてか、その後の記憶をたどろうとしても、たどれなくなった。一美の体はそのまま倒れこみ、起き上がろうとするが、剣がまるで生き物のように、一美の体にゆっくりおりかかってきた。そして、かすかな重みとともに、気を失った。
それで、数分がたってから、友達の2人が起き上がり、周りの様子を見る。光が消えたのだろうか…。そして足元をみると、気を失っている昭代と、一美の姿が…。何が起きたのか理解できなかった。
それでも、どうしてか全く分からないままだった。それはそうと、この2人をどうしようか迷いつつ、すぐに、物置スペースから引き離し、体を引きずって昭代の部屋に入れたのである。
それから数分、いや数十分がかかった。なかなか一美が目覚めなかった。ショックが大きかったのか、少し目を開いて、剣が光を失っている事がわかった。それで、昭代が顔を覗き込んでいた。
「大丈夫?」
心配そうな顔、そして、他の2人も同じ顔をしている。はて…、このように覗く視線はと思って周りを確認すると、そこは昭代がよく使っているベッドだった。階段はついていないうえ、床が高くない。と言う事は、
「大丈夫よ。ありがとう。」
それより、剣はどこにあるのか…、見てみると、ベッドのそばにあった。
どう言う事だろう。剣が側にある。いや離れない…、これはどう言う事だろうか。
「この剣は…、どう言う剣なのか…。全く分からないまま、しまってあったという事ですが、なぜか、最近光を放つようになったのですから、私にはどう言う事か分からなくて、それで聞いてみたのです。」
と言葉を切って、一美の側にある剣を見てから、一美に向きなおった。
「そしたら、剣が『龍を呼べ』と言い、その名前は誰の名前ですかと尋ねると、『北田一美』と答えたので、手紙を書いたのです。」
と昭代は答えた。話がつながってきたようである。
昭代の4代前、野上家から前島家にやってきた一振りの剣があった。それは、君主にしか与えられない剣だったと曾祖父が祖父に語ったと言うのである。それから、数代を経て、今に至ったのであるが、その剣が黄金に輝いていた。この事から、古代中国(地球)の「三皇五帝」思想、「五帝」にあやかり「五帝剣」と名付けられたのだが、いつしか皇帝の付ける剣として、「五皇黄帝剣」と名付けられたのである。
だから、主を失った剣が新しい主を見つけるため、光を放つと言う事が噂となり、野上家の人物が、それを手放したのは、新しい主を見つけようとする為に、手放したのではないかと、信じるようになっていた。
それで、野上家とはいかなるものか…、誠に申し訳ないが、少々お付き合い願いたい。
野上家は、野上奈宇鹿の清風帝を祖とした「斉」朝の皇族である。奈宇鹿はもともと野上家を名乗っていなかった。
その理由は「斉」の一地域の名もなき豪族だったと言う事であり、その奈宇鹿が「南陽」の国主、椅毎伊佐絎亜(イザベリア・イスマイール)から野上姓をたまわって、名乗った事に由来する。
ちなみに奈宇鹿が皇帝になったのは17歳と若かったが、「斉三銃士」と呼ばれる家臣とともに中華地域を統一し、「斉」王朝をたてたのである。
その皇族の名前が野上家で、その分家に当たる家は数えるときりがなくなる。そののち「西斉」と「南斉」の合計400年間にわたって南北を統一したのだが、P.W.1422年に滅亡したのであった。
その後、代わった「大波」は、「南斉」の皇族を保護しようと躍起になったが、「南斉」の皇族は抵抗活動をするため、姓名を変えて潜伏し、国家運営に苦労したと言った記録がある。
それゆえ、野上家の1人の人物が、「五皇黄帝剣」を前島家に渡したとも言えるし、その分家の可能性もある。ただ、一言、言えるのは…、君主を次世代に託したと言う事であり、それは、野上家が皇帝になる資格を返上した事になる。それが、この剣を渡した理由であると言う事だった。
しかし、その君主を待っていたと言う事だろうか…。それが、わずか7歳の一美に剣を託したのか、まるでわけがわからないままだった。

この記事へのコメント