タイトル:一章 主要都市広州 13

「しかし、なぜ、このまま王朝は倒れると、お考えなのですか。」
新次郎の横にいた武弘は質問する。それに一美は、
「確かに、このまま倒れる理由は、一つ、商業政策の誤りにある。平等に扱うべき上納金を、中華に地盤を持って来た者に対しては高く設定し、イスラームに関しては、低く設定している。それだけではない、文化などの押し付け等がある。そのほかにも、租税を高額にしてしまったことも仇となった部分であろうし、それ以外に、雇用不安、天災など、色々な要素があると思う。」
確かに、さまざまな要素が重なってしまったのは否定できない。ただ、一つをとっても、イスラームを保護すると言う要素が抜け切れていない。税に関しても一美は同じ指摘をする。
「税金に関しても免税されているのは、大企業だと言うらしいが、それも多くがイスラームであ固められている。それを考えると、この不条理が人々を覆い尽くしていることは確かで、それを取り除きたいと考えるからこそ、立ちあがったとみてよいのではないか。」
それに頷く新次郎。武弘も納得している。ただ、今度は新次郎が気になる事を聞いてみた。
「おそらくそこには、商団関係者も入っているのではないですか?」
それを聞いて、一美は、
「それもそうだと思う。確かに商人の財力がなければここまで来ないはずだ。」
と考えた。確かに、新聞によると規模は、15万人近くに達したと書かれている。
それを見ながらも、その参加した人数の比率に、一美は意外な点を見つけた
「これは、15万人の中に、イスラームの民が一部、含まれている約1万人がいると言うそうだ。おそらく、イスラームの中でも、不満を持つ民がいるのだろう。」
15万の中の1万と言えば、約9分の兵力が同じイスラームに所属すると言う事である。だとすると、シーア派の一部に今の王朝に対して、反間などを抱いていると言う事ではないか。
一美の指摘は、一理あった。確かに、全て中華の民とは言え純粋な民の中に、一部イスラームが、全ての政策に賛成していて、それ以外の人々は賛成に回る人もいれば、反対に回る人もいると言う事であろう。
「しかし、イスラームの民の中にも、不満があると言う事か。それより、イスラームの大多数が大波政府を支持しているのかどうかですね。」
それがカギだが、それに関してのコメントはなかった。いわば、言おうとしてはならない事を書こうとしていた新聞記者が、その記事ではだめだと言われてしまったのだと、一美には想像できた。
そう、隠れた不満として、自分たちの意見を、自由に言う事が出来ないと言う事実である。これは、言論の自由が奪われている事に等しいのであり、彼らの行動が、国家の動揺をあおっていると言われることも多々あるとと言われている。
それでも、彼らは真実を伝えるために、命を狙われかねない行動を、毎日送っていると言うのである。それが、今回の反乱を見てから、一美が考える事であった。
「しかし、これで不満が噴出する地域も出てくる。それが、国を倒す力となるだろう。それを抑えたとしても、また別の勢力が頭をもたげて、反乱をおこす。そういう構造が作られてもおかしくないだろう。」
一美の先を見る目は、そこまで射抜いている。それも、父親の背中を見たのだろうかと、新次郎には思えてならなかった。
一美は先を見る目は、どこまで正しかったのかと言うと、実は遠くのコリアン地で、大乱が起きたのである。
その反乱は、木浦コロニーで起きた事から「木浦の乱」と呼ぶ事になるが、その「木浦の乱」は一美が旗揚げする1年前に至るまで6年ほど続く事になる。
それから7年後、一美が「木浦の乱」を起こした、高麗王国将軍の子息を、かくまう事になるのは、まだ先の話であるが、その乱の一端が、徐々に広州に押し寄せようとしていた。

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