タイトル:二章 流れの変化 14

この福州以外に、彼らを匿っている場所は、無いに等しい。その中で、福州コロニーにいる。高田と小寺が話し合っていた。
「それより、直胤殿が上海から逃れたと言う事は、この福州にも災いが起きると、啓宗殿は見ておられるのですか?」
必ずしも、そうとは言えない。
「確かに、勇策殿の言う事はもっともだと思う。だが、そうとは言えない。しかし、同じく逃亡者を匿っている商人が、摘発されたら、どうなるか分からない。」
そう、それがあるから、2人が協議しているのであった。そこに、顔だけを出して、2人の話を聞く人物がいた。
「あらあら、こんな所にいましたとは。」
男は畠山正善、数日前に畠山家の当主となった人物である。
「正善殿も、この話に首を突っ込まれるのですか?」
勇策が、聞いてみる。
「それは、そうかもしれませぬが、兵頭殿と、小寺殿の関係があの2人の関係から、始まっていた事は知っていたのですが、受け入れるのは勇気があると言う事で。」
称賛かと思える事だが、それが、この都市での見方だった。それもそうだが、広州では、どう言った事を言われていたのか、
「広州は、どうなっているのですかね? 我々と、同じ考えを持つ人材が、いるのではないでしょうか?」
と正善が聞く。
それに、啓宗は、
「そう言うっことになるだろう。」
と答えるが、勇策は、
「1人いると言えるだろう、それは北田家ではないかな、確か、北田家は商人として、多くの地域に顔が利くだろう。だから、多くの人材を受け入れてきているのだろうが、この娘さんは、意外にできた方だと聞いておる。」
と答える。
それゆえ、一美も多くを吸収していたから、こう言った事が、どういう意味を持っていたのかを、理解しているはずである。
「名前は、一美と言う人物だ。それで、勇策殿、北田家はどこの家がらに属すのかな?」
それを調べていないといけないだろう。そこで、正善は調べ始めていた。
北田氏は、三浦氏の分流だったが、戦国時代に一旦滅びた。ところが、三浦氏からの傍系と言われている佐原氏から山吉氏を経ているが、それがほとんどではないようである。
「それが、何を見てみれば、分からない。北田姓は、複雑だ。」
しかし、さらに調べてみると、三浦氏は6人に分かれており、そのうち、土屋氏になっている事が分かったのである。それゆえ、独自の系列である事が分かってきたのである。
「三浦氏と、土屋氏の二つの系譜になっていると言う事である。」
と啓宗は言うしかなかった。

それを言われた一美は、2人を匿ったまま、生活を始めて、さらに一月を経過させていた。それより、日ごとに厳しくなるコリア情勢、それが、何より気がかりであった。
第一に、軍勢の数に、限界があると言う事。第2に、軍資金に関する問題。第3に、コリア人々の感情を、「大波」が押さえていると言う事である。
それを考えながらも、一美は、真の世話をしていた。特に屋根裏にいる真は、一美に感謝の意を示していた。それも、自分を匿ってくれていると言う事を、口に出さなかった一美の口の堅さなどに、自分を守ってくれると言った思いがあったからだと言える。
「一美さん。」
声をかけて、一美が振り向いた。
「どうしたの?」
一美の声に、真は思わず顔を赤くする。赤い顔をしながらも…。
「一美さんは、どうして、私を許してくれたのですか?」
と聞いて、一美は、
「私も、過ちを犯すなと言いたいだけです。それで、あなたの、本当の事を聞きたいからです。」
一美は、何を言いたかったのか、分かったような気がした。
「僕は、僕なりに難しい人です。それよりも、私が、歪んだ性癖を持っていたからです。だから、先生に当たってしまい。それで、先生を傷つけたわけです…。」
一美は、ただ黙って聞く。そして、沈黙した後、すぐに受け入れるかのように、真の体を抱きしめた。それは、昔から、知っていた温かさであったのかもしれない。
一美は、その温かさに、真のうぶな心を、見た気がした。

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