タイトル:第三章 北田一美 10

その為か、戦線の傍観者達が、そう言った形で、興味を示していたのに対して、動かしている本人たちの場合は、そんな事を気にする余裕はなかった。
そう言った状況の中で、一美は海賊たちの攻撃をかろうじて防いでいた。それは、この戦闘ロボット、バスタードガンダムの性能が一美の身代わりとなっているのだろうか。
「この機体は、私の代わりをしてくれている…。」
そうだ、彼女の能力を引き出すために、色々と調整を行っているのだ。
感謝してもしきれない。これは、まさに、彼女の戦い方に、ロボットが合わせたと言う事である。この戦闘ロボットバスタードガンダムは、一美の事を考慮して、作られた専用機体だったのである。今のところ、テストをしていないと言う事は、今回が実戦による試験であると言った部分を、含んでいた事に他ならない。
あのやり取りで、職員が許可を出した理由は、ここにあったのではないか、一美はそう疑っていた。
「しかし、性能は良い。」
それは本当の話で、機能性がはっきりと表れていたのである。この機体の性能の高さ、反応速度の速さは、ジンクスだけでなく、ウィンダムの反応速度をはるかに超えたものだった。
一言でいえば、俊敏で且つ、無駄のない動きを見せる機体。それは、多くの者たちをひきつけていたのである。
それは、2機の試作機をはるかに上回る運動性、そして、それを操るパイロットがいればこそと言うのだが、一美では、少々役不足にも思えた。
「少し鈍くなるな。」
戦闘用ロボットウィンダムの数は、増えるわけでもなく、減るわけでもない。しかし、戦闘不能となった機体の数だけが増える。
主に、右腕部分を、ビーム系統のサーベルで、斬り落とすか、ビーム系統のライフル銃で撃ちぬくか、それのどちらかである。
戦闘ロボットウィンダムにもビーム系統のライフル銃があるが、性能の差は歴然としている。戦闘ロボットバスタードガンダムの外を覆っている青色や白色の装甲が、彼らの攻撃に耐えるどころか、寄せ付けなかったからだった。
他にも、20mmの機関砲が火を噴き、相手の頭にあるカメラを狙い撃つ、接近戦にした時に、有効な武装として、機能していたのである。
しかも、耐久時間が長い。それが、エネルギー消費量、つまり、電気消費量を抑えているのである。だからこそ、人間でいえば、長距離走を走った後の、息切れみたいなものは基本的には起こらないのだから、便利であった。

戦闘を察知してから1時間、戦闘開始から40分、3機はウィンダム部隊を戦闘不能にさせていた。政府軍の部隊は、そのまま居残り、3機だけが「愛宕」に帰還していた。
「まさか、実戦テストと言う事になろうとは…、我々も、予想ができませんでした。」
それはそうだろう。あんな事で、戦闘になるのだから、予測はできたと言えるだろう。
「申し訳ない。私がそこまで考えていなかったから、このような事になった。」
一美は、申し訳なく思っていた。
「それは、違います。」
と新次郎が慰める。確かに、この戦闘は、予想できたのかもしれないけれど、この場所を、探す時には分からなかった事であって、一美に責任はない。
「ほうじゃ、ほうじゃ(そうだ、そうだ)。」
と辰信が、土佐弁で答えた。
しかし、それから数分後、レーダーの解析を行っていた通信クルーから、とんでもない情報がもたらされた。
「大変です。えらい事になりました!」
どう言った事が起きたのか、
「戦闘不能のウィンダムをジンクスが…。」
これで、クルーたちに意味が伝わった。つまり、非戦闘員の捕縛に乗り出したのである。それは、捕虜の待遇について述べられた条約に反する事になるのである。
「何だと!」
一美は、怒りをあらわにして、叫んだ。
「そげなことして、なんなるか?(そう言う事をして、何になるのか?)」
辰信はあきれ顔で言う。
しかし、どうしてそんな事に、なったのか分からない。その時、何があったのか。

最近になって分かった事だが、友沢宗徳の話では、実際艦長だった彼にとって、この命令は出すべきではないと、主張したのである。
しかし、それが、上司の命令で、このような事になったのである。
「私は、断固反対です。戦闘不能の兵力は、逃すべきです!」
と述べたのだが、上司は頑固に、その命令を出し、止めた彼には謹慎と言う処分が下された。
その為か、彼は数日後に辞表と除隊嘆願書を出して、軍を去る事になったのである。

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