タイトル:第三章 北田一美 12

それから、数日ほど一美は考え込んだ。何が大切なのか、そして、何をするべきか…。一美は、自室で考え込んでいた。
(これでは、この国はどこに向かわなければならないのか、それをどうするか、今、問われている事は、ここに通じている。だが…、兵力、知能が不足している中で、それをどうして補うか…。)
一美には、悩む事が多くなってきた。それは、この「大波」を変えるには、何をすればよいのか、一美は、友の昭代、クリフ、優香、仁部友姉妹を連れて、1人の思想家の元を訪れようと、考えたのである。
その人物が、この広州コロニーの創設に全力を尽くしたエメラルディア家の一族、ラフィ・エメラルディア・ディム・トマスの弟、ラフィ・エメラルディア・ティム・マシューレと言う人物である。
「不動の思想家」と言う、渾名を持つマシューレは、このままの体制に手をつけなければ、「大波」は沈むと危機感を募らせ、早くから他の思想家と交流し、「改革」を声高に叫んできたのである。
一美は、マシューレが唱える内部から変革を、理解していた。なぜなら、中華族が生き残るには、イスラムに帰依したものを登用する社会を変えることが、望ましかったのである。
実は、一美の事をマシューレは古くから知っていた。それは、儀式を行う時に、マシューレが武彦に、あった事があるからである。

それで、彼女は、マシューレの元に向かう前に、電話で彼の元にうかがう事と、中学校からの紹介状をもらって、彼の所に向かったのである。
「それでですか…、私に聞きたい事があったとは、それは何でしょうか?」
と聞いたのである。
一美は、自分の悩みを打ち明けた。それは、自分の考えていた事が、間違いとは言えないものの、その当時の自分の考えと、他の人の考えが、合致するのかと言った事に他ならない。
「それは、私の考え方が、間違っているのかもしれませぬが、私自身は何が起きるのか、分からないとどうしようもないのです。故に、あなたの意見を伺いに来たのです。」
マシューレは考える顔になった。どうしていいのか分からない。
「そうですね。私は、考えるところには、今までの『大波』の政策には、多くの人が振り回されてきました。それゆえ、彼らは意見を聞かないのだと、頭に聞かされる人たちばかりです。だからこそ、改革をする事が大きいと私は考えております。」
と言って、一旦言葉を切った。
「それは、私も思っていたところです。しかし、なぜ改革が出来ないのですか?」
一美が、疑問の声を上げるのも分かる。
「確かにそうですね。私にも同じ疑問がうかがえるのです。しかし、それを考えて、今は、地方から改革をするべきだと、特に若い世代に、活躍してもらいたいと考えております。そこで、あなたの重要な人材の一人に、その任を託したいと思うのです。」
要するに改革を行うには、その考えを持った人が必要となると言うのである。しかし、一美はここで疑問を感じた。それは、その改革を行う上で、どう言った方向性を示しているのか、と言う事である。
「方向性が、分からないのですが。」
それは、「大波」を生かすのか、それとも、「大波」に代わる王朝をたてるのか、その2点である。
「私は、『大波』を生かす方法を取ります。なぜなら、イスラム圏の方にも、この事に対して、なんとかするべきであると唱える者がいるからです。その芽を潰すのは、我々にとっても益にはならない。つまり、それらを壊すと言うのは、彼らの考えを聞き入れないと言う事です。」
この事に、一美は、少し気になると感じ取った。
「しかし、それで、多くの中華族の納得を売る説明ができるのでしょうか。それが、心配です。」
確かに、一美の言い分は納得がいく。これでは、不満をためている多くの中華族には、納得できるものではない。
「確かに、そうだと思います。多くの人々は納得できないでしょう。だからこそ、確かめてみるのです。改革できない理由を考える事になります。」
それは、その通りであろう。まだ、改革を成功させるには時間がいる。それくらいの事は分かっているが、多くの中華族の場合、耐えられる余裕があるのか、それは、一美の見て来た限りだが、そうだとは思えない。
まず、いきなり、武器を持って戦おうとする者たちが多く出てくる。それに対応して、政府が軍を出し、鎮圧すると言うのが落ちだ。
「耐えられないと思います。ただ、待ってみて、それで出来なかったら、どうなされますか?」
と聞いてみた。逆に、マシューレは、
「あなたなら、どうされますか?」
と聞き、一美の反応を待ってみた。
「私は、色々と嘆願書を出してみます。半年しても、何も反応がなかったら、答えが出ると思います。その時に決断します。」
マシューレに向かって、話したが、「決断」とは、「武力に訴え出る」と言う事の裏返しだったのである。

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