タイトル:四章 女神の導き 08

その少女は、じっと穂積を見ている。名前はなさそうであるが、じっと見ていると言う事は…、何かを訴えたかったのかもしれない。
それを見て、穂積は、少女のまなざしを見た。鋭い目、それは、この世に対しての怒り、そのものであった。穂積はその少女の手に、自分の手を添えようとする。
しかし、少女はとたんにその手を離した。まるで拒絶するかのようだった。それを見た穂積は、彼女の目をじっと見つめる。何かに興味を示したかのようである。
見つめられている少女は、顔を赤くして困り顔になっていた。女性であることは分かっていたが、何も話そうとはしてくれない。一体、彼女の行動には、どう言う意味があったのか、穂積は彼女の目を見つめて考え込んでいた。
「……」
無言で、ありながらも何かを言いたいようである。ただ、穂積は、それ以上見つめるのはどうかと考えた。
それで、視線を外して、穂積は耳を傾けた。声は聞こえない小さな声だ。
その少女は、
「私たち…、またどこかに行くの?」
と聞いたのである。穂積は、
「大丈夫、大丈夫だよ。」
と答えた。安心する言葉で、心を和ませるのが手だと、穂積は考えていた。
それに、少女は穂積の顔をまじまじと見つめていた。今度は、穂積が顔を赤らめてしまう。
「ど、どうしたの…?」
穂積の声で、少女は自分がどうして、そう言う行為に及んだのか分かった。興味があるから、と言うだけではなく、自分でもわからないくらい、穂積がカッコよく見えたのである。
それは、穂積にも言えた。
(どうして、この子は、こんなに逞しく見えるのだろう…。)
と、彼は、思わず彼女の目にのめりこまれた感覚を覚えた。
「名前は?」
と思わず、穂積は聞いてみた。少女は顔を赤らめて、小さな声で、
「うらら…。」
と答えた。しかし、この少女は名前を名乗ると、そのまま、どこかに行った。この穂積と「うらら」の関係、それが、この2人が、後に一美の後を受ける君主と妃までなると言う事になろうとは思ってもいなかったのである。
それは、後に第3代君主となる穂積の息子にも、影響を及ぼすのだが、それも、果てしないものになろうとは、この時点では、まだそのかけらも感じられなかった。そして、それが一美にも影響を与えるのである。
孤児院では孤児の数が、1400名ほどいるそうである。この中から、商団の護衛兵に志願する人たちが、増えて来たというのである。それゆえ、一美の護衛を務めたいと言う若者が増えてきているのである。
しかし、それ以外にも、今の政治に対して反感を抱いているものも多かったのである。だからこそ、ラフェリア達が、ここに来たと言うのである。だからと言って…、防衛面に向いているのかについての審査が必要となる。

それから、穂積は、その孤児院に行く機会が多くなった。その少女「うらら」について、調べていたのである。調べていくと、この「うらら」意外に、「リーサ、フォルネ、カオル」の3人が、記憶なしと言う共通した特徴があったのであり、この4人がいわゆる戦闘に因ってのショックを受けたと言う事になるのである。
それは、一体いつの頃か、それをたどると、ある戦争に答えがあった。つまり、9年前に起きた「第1次南東シナ海戦争」の香港攻撃である。
その時に、香港が狙われたのである。その時にASEAN(東南アジア諸国連合)軍が、香港コロニーを攻撃したのである。この時、一美はその状況を、体験しているのである。しかも、広州であるが、その時の事を鮮明に覚えている。多くの軍隊が、広州地域を埋めてしまっているのだから、それについての記憶は鮮明である。しかも、この4人は最前線の地域に、住んでいた上、両親を一度になくしたのであるか、その時の激しいショックを受けていたと言う事になるのかもしれない。
それで、その4人に会おうと穂積は思った。それで、職員に、
「その子たちに、会いたいのですが、大丈夫でしょうか?」
確かに、そう言う事になるではないだろうか、だが、職員は、
「分かりました。うららさんに会うと言う事でどうでしょうか?」
と聞いてみた。
「大丈夫でしょう。彼女はあなたの事を知っておりますので、その天の心配は無用かと存じます。」
その答えを聞いて、穂積は、うららに会う事にしたのである。
うららは、自分が呼ばれたと言う事を聞いて、考え込んでいた。そういている中で、穂積が姿を現した。
「うららさん。はじめましてかな?」
穂積は、うららに挨拶をした。
「あなたは…?」
うららは、まるで覚えていないのだろうか、
「私の服の袖をつかんだのがあなたですが、私の名前は言わなかったのかもしれません。私は、北田穂積と申します。」
と自己紹介したのである。
何かあったのか、
「あなたは、私の顔を見ていたのですか?」
と逆に聞いたので、穂積の顔が赤くなった。
「そ、そうです。」
穂積は、頭を掻いていた。

その2人は、どうしてこうなったのかまるで分らなかった。
「私は、あの戦争で、両親をなくしたので、私の心は、ぼろぼろになったのです。」
声は、はっきりとしているが、それは人から聞いているから話せると、うららは、言ったのである。
「もし、もし、君が良ければ、僕の家にきてもいいと思うよ。」
その言葉に、うららは、自分の事を考えていたが、
「そう言えば、姉に相談しようと、思うのだけど…。」
確かに、分かっているのかもしれないが、一美は、穂積の恋心に気づいているのかもしれない。
そんな事を考えてみると、姉は、どう言うのか…。
「またまた、こんな事を言うと思ったけれど…。」
なんて言うのがセオリーか、それが、一美の答えかもしれない。しかし、
「そう、そう言うことね。穂積は早くも大人かぁ。」
と言わるかもしれない。
それから考えてみると、一美の事を考えてみた。穂積は帰ってから、一美に話をしようと考えていたのである。だからと言ってもいいのかもしれないが、数十分かけての帰り道で、話そうと決意した。
一美の部屋にきてみた。
「お姉さん。ちょっといい?」
一美は、振り向いて、
「穂積、話があるのでしょ?」
穂積は頷いている。
「恋の事かな?」
一美の言葉に、穂積は頷いたが、
「なんで、知っているの?」
と驚いて、聞く。
「顔が赤いからよ。何か隠しているような気がする。」
それで、心が晴れたのか、穂積は色々と話し始めた。
「そうかぁ。その女の子を、守りたいのね。」
一美は意外な答えに、
「それだったら、家にその子たちを呼んでみたら?」
と提案した。それで、父親の武彦に話してみようと考えたのである。

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