タイトル:女神の導き 21

しかし、このネギにとっては、まだ知らない話であって、この9年前の出来事は、親から伝え聞いた話である。それゆえ、実際に体験した事ではない。だから、説明に不足する所があるのである。
これは致し方のない事である。だからと言って、彼を責めるわけにもいかない。そうだと恵恩は思った。恵恩は彼の話を、新聞で読んでいた。確かに時代が9年魔に大きくうねったヨーロッパ、それに比べて、アジアは依然として、大国の大波が、国民を押さえつけていたのである。
だから、この状態をどうにかしなければ、アジア自体の沈没は避けられないとヨーロッパの諸見識方は新聞に書きたてているのである。
ただ、この9年前の戦争で、力をつけたイギリスと、没落したイスパニア・ポルトガル、植民地コロニーを失った時点で、この国の運命が決まったと言っても過言ではない。
だからといって、多くの国がひしめくこの時代、どこの国が世界の中心として、いるのかは分からない。言えることは一つ、流れは民族の多様性を尊重する動きに傾いているようだ。
だからこそ、イギリスがこのように、イスパニア・ポルトガル帝国に勝利できたのだと言えるのかもしれない。
「それより、今まで、こう言った形で、私も旅ができると思えば、平和だと言えるかもしれませんね。」
ネギは、そう言ったのだが、恵恩は、眼を鋭くして、
「それと私は異なる考えで、この平和は東南アジアだけであると言えるわ。」
確かに東南アジアは、まだまだ平和であり、それによって、国家のパワーバランスが保たれている状態である。だが、これが他の地域で当てはまるかと言うと、それは異なる話である。
そのまま、2人は、首都バンコクまでゆられていた。高速列車は、国境駅で、タイ政府の入国審査を受け、ここからタイの首都バンコクまで走る事になる。そして、バンコク到着が、午後7時ごろだった。
そのまま、突っ走ったので、港までは少しの時間で乗り継げるように、改良が加えられていたのである。それゆえ、すぐに、船に乗る事が出来るのであった。
午後7時半発の広州コロニー行きの航路で、一路南東に向かい、バンコクの近くにあるメコン川に入り、そこから、外海にでて東南に向かい、カンボジア沖を通過する。その後、南シナ海、東シナ海を経由して、2日で広州に就く予定となっている。だから、この間に、2人は一緒の部屋での起きする事になった。

その頃、一美は高校生として、何事もなく過ごしていた。その中には、あの幸や、別の高校に通っているクリフ、優香、昭代と連絡を取っていた。
その4人が久しぶりに会ったのである。場所は、クリフのよく通うカフェ、一美の軍師であるラフェリアもいた。
「久しぶりに話と言うと、実は、大波中央政界に激震が走ったそうです。」
と昭代が、深刻な顔をしていった。
どう言う事が起きたのだろうか、
「何が起きたのか、聞いておりますか?」
幸は昭代に聞いてみた。一美は、ある人物の例えを出した。
「李斯が趙高に、濡れ衣を着せて殺した、と言うのに近い事を、やったと言うのか?」
その例えは、幸にとって、誰が、誰なのかという知識の差につながった。
そこを、一美は噛み砕いて行った。
「まず、この意味にした理由は、趙高は宦官でありながら、自分の欲をそのままぶつけ、反対するものを処罰したと言う。その中には、法律家として地位を保っていた李斯も含まれていた。実は、『馬鹿』の語源は、趙高が鹿を馬と言った事からきていて、それに反対したものは打ち首の刑か、穴を掘って、そこに反対した家臣たちを生き埋めにしたと言われている。それが変化して、今の意味になっていると言われている。その李斯が、項徳と言う人物に当てはまる。」
そこで、一美は言葉を切る。その上に、ラフェリアが付け加えて、
「中華族の代表者が、項徳と言う人物であり、その項徳が故郷の上海に無断で、帰ったと言う事らしいので、それで、多くの官僚たちが、慌てふためいていると言う事です。」
確かに、官僚の多くは、中華系に属している。故に、この官僚たちに、想像もつかない弾圧が待っているかもしれない。だから、彼らにとっては衝撃が待っている事に等しいのである。
「これで、アブドラ・アル・シラム・ムハンマドに対抗する勢力は、いないと言う事です。つまり、誰もかれもが、彼のいいなりか、利害関係で一致している人物です。」
そう、これは独裁国家に等しい意味を持っていると、一美たちは判断していたのである。幸は、
「一つ気になる事がありますが、よろしいでしょうか?」
と口にすると、多くは頷いた。
「アブドラ・アル・シラム・ムハンマドは、イスラム教徒であり、スンニ派であります。その点では恵まれており、皇帝からの信任も熱いと考えられるのです。しかも、その権力を笠に着てしまえば、何だってできるはずです。しかも権力を握りたいなら、わざわざ、中華族の有力者とやりあったとしても、おかしくありません。所が、項徳さまと言う方は、何もしなかったという事になるのでしょうか?」
一美は、幸が、思わぬ事を言ったのに気づいた。
「いや、項徳と言う人物は、あえて引いたと言う事にならないか。」
確かにそうだと言うべきかもしれない。混乱を避けるためにこうなったのだと言える。それだから、彼は、混乱を避けるために、こうなったのだと、一美は考えた。
(項徳はいち早く、歴史の流れをつかんでいると言う事だ。これが、変革の呼び水となると、凄い事になりそうだぞ!)
一美は、そう考えてきた。そう、戦いの呼び水となれば、この項徳は、まさしく、指導者となるだろう。一美はそう考えていた。

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