タイトル:「広州軍」北田一美 18

所で、樋賦琿と一美たちは、雲南に到着したが、利宗は、彼女が上皇陛下の肩書を、外してしまったのだから、彼女はただの人に変わったのにもかかわらず。礼節を尽していた。
それに智光も続いて、彼女に礼節を取ったのである。彼女はそれ以上の存在であると言う事に、感心するしかなかった。それは、彼女がそこまで言われているのとは異なり、彼女自身は、この礼節に対して、全くと言っていいほど、反対の感情を持っていた。
それは、彼女自身もこの戦線だけでなく、家臣たちの横暴に振り回されて、静かになりたちと言う気持ちを持っていたからである。
それを一美は感じ取り、利宗と智光の2人と賦軍を離して、次のように説いていた。
「彼女は、皇帝時代や上皇時代を通して、『大波』の家臣たちの横暴を止められなかった。それだけでなく、彼女の心は、傷があり、私たちは彼女をいたわってあげないと、いけないのかもしれません。その事を心の隅にでも置いておいた方がよろしいかと存じます。」
それに、2人は頷いた上で、利宗は答えた。
「確かに、彼女の心はズタズタに引き裂かれた状態にある事は分かっております。だからこそ、礼節を尽そうと思えます。しかも、その人に対しての最大の礼節こそが、最大のもてなしだと思えます。」
一美は、それも考えの一つだと言える。
「それも、私は考え方の一つだと言えます。」
だからと言って、
「ただ、彼女がそれを歓迎すると言えるかどうかは、分かりません。それだからこそ、彼女の心の移り変わりに注意してください。」
と口にしたのである。そこは商人としての、心遣いであり、その一美の心遣いに、賦軍は感謝を示して、礼節を尽した。
それだから、一美たちは、そこで広州の情報を聞き始めていた。
それだけでなく、北側の情報も逐一、収集していたのである。それによると、『紅巾』軍は、福州と上海に同時攻撃を仕掛けて、来ると言った噂が流れていた。しかし、それは正確ではなく、一美たちはそれを信じる事が出来なかった。それゆえ、一美たちは、すぐにその情報の裏付けを取る為に、一美たちはすぐさま、情報組織の一つである「北田商団」諜報部を用いて、情報の収集にあたる事にしたのである。それ以外に、一美たちも広州に戻り、その後の状況を把握する事が大事だった。

それより、福州にいたちずるは、ある場所に向かっていた。そこは、ちずるの通う高校である。
名称は「薫風高等学校」で高等学校と、中学校を兼ねた学校として、今はやりの「中高一貫校」と言うのである。その学校も、緊迫した空気が漂っていた。
まず、高等学校の生徒たちは、まだ事態の把握をしている人物がいなかった。考え方はそれぞれに因って、十人十色、強制的に意見を押し付けるべきではないと言った考えが多いが、ちずるも同じ考えを持っていた。
だが、ちずるの考えている事は、他の生徒よりは飛躍していた。事実、この『大波』と言う国家は、時代の波に遅れている。それを考えれば、中華事態の自立を促して、中華族が、自らの政治を行う事が、この国のあるべき姿だと言うのである。その考え方は、勇策たちの考え方に似ている部分も多かった。
しかし、今は、事態がいかに移るのかが、まったくもって不透明である。それを考えられる事ではない。ちずるは、その状況を、如何に考えるべきなのか、それを迷っていた。考え方の似た人間を探すのが、今のちずるには必要だった。つまり、このままでは一匹狼になる事は目に見えていたのである。だからこそ、似たような考えを持つ人材を、探さねばならなかった。
実は、それに関して同じ悩みを抱えた人物がいた。それは、主人公の一美、昭代、凛茜姉妹や、ちずると同い年の少女で、名前は宝仙綾音と言う人物である。宝仙の名字は、蓬仙と言われている。その蓬仙家は、名武将として知られている相葉姓を名乗る蓬仙アオイが祖先となっており、その系統の子孫と言われている。だた、相葉ヒロトが途絶えていた蓬仙家を復活させた為に、彼女の系譜が、出来上がったのである。
それは、考え方にも表れていた。今の『大波』では、今後10年は保つことはできない。だから、今の状態では、これからの『大波』の運命は定まったに等しいだろう。だから、彼女たちは、それを一つの考え方に集約しないと、それは実現できない事が分かっていた。
だから、ちずるの存在は、綾音には気になっている事でもあった。だから、ちずるの考え方を聞きたかったのだが、普段はあまり付き合いのない2人であり、しかも、綾音はちずるの秘密をまだ知らないのである。
会うべきなのか、会わぬべきなのか…、綾音は教室にある自分の机の上で悩みだしてしまった。それを気にかける少女がいて、綾音にもその気配が分かっていた。
「楓…。」
名は和泉楓、和泉家は尾瀬家に嫁いだ和泉こずえの末裔だが、和泉まさみの代で尾瀬家に再び嫁いで、和泉家自体がいったん途絶え、尾瀬家の中に組み込まれたが、再び、尾瀬家の息子の一人が、和泉家を名乗り、それによって、楓の所まで続くのである。その楓を見た綾音は、何も答えようとしないまま、考え込んだ。
「どうしたのよ、考え込んで…。」
非難されたような口調で言われてしまい、綾音は、
「ある人に会うべきなのか、会わぬべきなのか…。それが気になってしまって、それでね。私は、どうしようかと悩んでいると言わけ。」
と答えた。悩みと言えばよいのかもしれない。しかし、綾音は、そのちずると言う人物が、どう言う人物かもよく知らないし、噂によれば、女性を求めるととんでもない人物だと言われている。
しかも、愛した男性は、いるのではなく、女性をいちずに愛してしまう、そんな噂もあって、会うのをためらうような感触を抱いてしまう。だから迷うのである。
「本当にそうなら、会わない方がよいと思うけれど、あった方がよいと思うよ。」
それなら、会うべきなのだろうか。そうだあっておくべきではないか、そう決心して、立ち上がると、ちずるの元に足を向けた。そして、彼女の意見を聞く為に、ちずるの元に向かったのである。
その動きに反応したちずるは、その気配に反応して、綾音の動きを目で追った。そして、自分の所に来るのを見て、自分の事で何かあると感じた。
綾音が感じ取った気で、ちずるは反応していた。丁度、ちずるが教室に入ろうとした所で鉢合わせしてしまった。
「あっ、ちずるさん?」
綾音は、気が抜けたような声を出していた。それに、ちずるは驚いたものの、
「どうしたの? 何か聞きたい事でもあるの?」
とちずるが聞く、さすがに、何かオーラがあるのは事実のようだ。しかし、綾音は何も言いだそうとしない。
「?」
ちずるは、綾音の顔をうかがいながらも、
「私と同じ事を考えていたの?」
と聞いてみた。しかし、綾音の顔には赤みが差している。その理由は、ちずる自身の秘密とも、関係しているのであるが、それは、まだ明かす事が出来ない。
「そ、そう言う事よ。実は、私も友を探していて…、この国をどうすればよいのか…。」
そこで言葉を詰まらせたが、ちずるはそれを理解した。
「中華族が主役となる国家を造ると言う事ね。」
と、柔らかく言ったのである。これが、ちずると綾音の出会いそのものであった。

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